太宰治といえば太平洋戦争をはさんで戦前~戦後に活躍した作家です。太宰の作品に決まって登場する内向的で社会にうまく適応できない主人公 -その生き方は今もなお新しい読者をつかんで離しません。
何かにうちひしがれたような呟きは、太宰の本音なのかそれとも創作なのか。気弱で魅力に薄い主人公ですが、確かにそういう人はいるし自分にもそういう部分はあるのかもしれない。徹底した弱者視点は成功者ばかりが人生ではないことを教えてくれます。
現代のSNS時代にもし太宰が甦ったとしたら、さぞや人気のブロガーになっていたかもしれません。
まさしく時代を超えて輝き続ける、希有の作家と言えるでしょう。
このたび2025年6月6日(金)より、太宰の短編小説『雀』の直筆原稿全ページ(原稿用紙38枚)が三鷹市美術ギャラリー(東京都三鷹市)にて初公開されます。(期間:2025年6月6日(金)~9月7日(日) )
太宰治展示室 三鷹の此の小さい家(三鷹市美術ギャラリー内)
https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20250606/
太宰の作品を読んでみると、だれでも書けそうなわかりやすい文章です。ところが自分も書こうとしても太宰のような文章はなかなか書けない・・・。そういう経験をお持ちの方もいることでしょう。言葉の一つひとつが用意周到に組み立てられた複雑な構造に気付かされます。
今回、三鷹市美術ギャラリーで展示される太宰の原稿は、書き足しや推敲のあとがわかる直筆の原稿といわれています。作家、太宰治の創作の秘密がわかるかもしれません。
◆
「私の汚い骨も、こんな小綺麗な墓地の片隅に埋められたら、死後の救いがあるかも・・・今はもう、気持が萎縮してしまって、そんな空想など雲散霧消した。私には、そんな資格が無い。」(『花吹雪』より)
森鴎外の墓所近くに葬られたいと吐露する太宰節全開の一文(『花吹雪』)です。名作『人間失格』を書き上げた太宰は、玉川上水に身を投げて命を絶ったことはよく知られています。不幸な亡くなり方でしたが、三鷹・禅林寺、森鴎外の墓のはす向かいに、彼の希望通りに墓は作られました。
愛人と入水自殺した太宰でしたが、その遺骸を引き上げたのは太宰が贔屓にしていたうなぎ屋のご主人で、その墓をたてたのは彼の妻、津島美知子でした。
[804]桜桃忌、玉川上水、「若松屋」のうなぎ
(「できる!」ビジネスマンの雑学 2023年06月16日)
https://www.asuka-g.co.jp/column/2306/012320.html

今年も6月19日がやってきます。77回目の桜桃忌はもうすぐです。(水田享介)