出版社が紡ぐ「ことば」のコラム

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[第1回]はじめまして。コラムニストの水田享介です。

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皆さん、はじめまして。コラムニストの水田享介です。誰?と思う方がほとんどでしょう。それは正しい反応です。私は有名人でも著名人でもなく、自慢できるような業績や名誉、地位もありません。

唯一、コラムニストと言える根拠は、明日香出版社公式サイトにて[「できる!」ビジネスマンの雑学]というタイトルで700回以上のコラムを連載していることでしょうか。それ以外には、専門知識を活かした数冊の書籍を書いています。

[「できる!」ビジネスマンの雑学]

ご縁があってアスカ・エフ・プロダクツ公式サイトにてコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

無位無冠の私ですが、言葉を扱う職には数十年のそれなりの期間、就いています。
大学は早稲田大学第一文学部、専攻は日本文学科でした。日本語、日本文学について心ゆくまで学ぶことができました。ただこの学部、学生の二人に一人は作家志望や出版社志望という文芸に対して熱量の高い学部でした。文学にそこまで人生を懸ける覚悟のない私には、決して居心地の良い場所ではありませんでした。

1981年春、一般企業に総合職として就職した私は「ふたつの初めて」に出会いました。ひとつはコピーライターという職業。もうひとつはコンピュータです。

外部の制作会社と取引する中で、コピーライターなる職業があることを知りました。作家になることの困難さに比べて、コピーライターの敷居の低さはとても魅力的でした。たった一行を書くだけで固定給がもらえるとは(キャッチフレーズのことですが大きな誤解)。しかも流行語を産み出せば女の子にモテモテ(もっと誤解してました)。ことばが打ち出の小槌に見える夢のような職業でした。時代はバブル前夜、糸井重里氏が登場する少し前のこと。

コンピュータはまだ一人一台ではなく、ひとつの部門に一台。HP社製で米国直輸入品。当然のようにマニュアルはすべて英語。書店に行ってもコンピュータの本はまだ並んでいませんでした。しかも、何をするにも自分でプログラムを組まないと動作しません。が、そこが魅力でした。
自分で好きなように動かせるのですから。

入社してこの二つに出会った私は気がつきました。コンピュータのコピーライターになれば儲かるはず。その将来性に気づいた私はすぐさま転職を決意。会社勤めの傍ら、せっせと習得に努めたのはいうまでもありません。

※後に転職し楽しかった航空機の職場にて。空の安全は ANAM が守る。

※慣れ親しんだコクピットBombardier-DHC800-Q400-FS 。ANAMフライトシミュレータ部門での担当機体
ANAM=ANA AIRCRAFT MAINTENANCE CO.,LTD./全日空整備株式会社。

現在は ANAベースメンテナンステクニクス株式会社 に組織変更
http://www.btc.ana-g.com/

二年後、無事にコピーライターに転職した私は、修行のためある広告代理店に出向することになりました。そこは業界第2位といわれた博報堂。その中にある第三制作室です。  そこでの上司がCD(クリエイティブディレクター)、戸田裕一氏。同僚となったのが鈴木聡氏。戸田氏は当時、サントリー広告のメインコピーライターで数々の流行語を生み出していました。のちに博報堂の社長・会長(現職は、博報堂DYホールディングス取締役会長 兼 博報堂取締役会長)を務めることになります。鈴木氏は戸田氏のあとを引き継ぎ、誰もが知る有名コピーを連発。のちに朝ドラや映画の脚本家としても名を馳せることに(朝ドラは『あすか』、『瞳』)。

才能豊かな方々とともに働くのは楽しくもあり、それと同時に私に不足していた能力を鍛え上げる厳しい期間でもありました。

博報堂で学んだ文章修行とは次の3つです。

・人を不快にさせない言葉選びを心がけよ
・人に誤解を与えない的確な表現は必ずある
・もっとよい言い換え表現は無数にある。あなたが気がつかないだけ

広告表現の最低限のルールとは意外に平凡なものです。しかし自分がそのルールの中で書けるかと問われるとなかなか難しいものです。
広告はそれに加えて、いえそれ以上に「商品を売る」メッセージがなければ成立しません。
因数分解に臨むようなパズルを解くような言葉選び、一行にたどり着くための無限の試行錯誤、それがコピーライターのお仕事でした。


ここに至るまでの詳細は、私の著書『会社勤めで迷ったりむなしくなったときに読む本』に出ています。興味を持たれた方はぜひご一読ください。

文章修行はひとりでもできます。しかもお金もかかりません。誰にでもことばの門は開かれていると言っていいでしょう。
ことばについて、表現について、思い出とともに書いてみました。この一文があなたの文章表現の一助となることをお祈りしています。

(水田享介)

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