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第3回:タイミング重視のスピードリリース術

連載

はじめに

本は「出すこと」より「いつ出すか」で効果が大きく変わります。新製品発表や周年行事、展示会のその日に間に合えば、名刺交換や問い合わせが自然に増えます。今回は、むずかしい言葉をできるだけ使わず、90日で無理なく仕上げるやり方を、ひとつずつ丁寧に説明します。

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    まず覚えるのは「確認ポイント3つ」だけ

    制作が長引くのは、直しが終わらないからです。そこで、合意の場を3回だけに決めます。

    確認①「設計図OK」
    目的・読者・使いどころ・目次(章ごとの役割)をA4一枚にまとめ、全員で「これでいく」と決めます。

    確認②「試作品OK」
    表紙のたたき台と、中身2ページの見本を作り、「見た目」と「読みやすさ」を固定します。

    確認③「最終OK」
    完成PDFに対してYes/Noだけで判断。細かな言い回しのやり直しは、次回改訂に回します。

    直す場所を3回にしぼると、スケジュールが守れます。

    90日ロードマップ(週ごと・わかりやすい説明つき)

    1〜2週目:準備(確認①へ)

    目的を一言で:例「展示会で初回商談を増やす」。

    読者を一つに:決裁者なのか、現場リーダーなのか。ここがぶれると文章もぶれます。

    使いどころ:どこで配る? 何部必要?(例:展示会300部/贈呈50部/社内50部)

    目次と役割:各章に「役割」を一行で。例「第3章=解決法を3ステップで説明」。

    👉 以上をA4一枚にまとめ、全員で「OK」。確認①クリア。

    3〜6週目:原稿づくり(むずかしく書かない)

    **各章の冒頭に“結論ひとこと”**を先に書く(後で直してもOK)。

    事例は3点セット:課題→打ち手→結果。結果は数字が1つ入ると強い(例「問い合わせ2.3倍」)。

    写真・図は早めに決める:迷い続けるより、撮り直す/描き直すほうが早いです。

    コツ:レビューは週ごとにテーマを分けます。
    今週は内容だけ、来週は言い回しだけ。ごちゃ混ぜにすると終わりません。

    5〜6週目:見本づくり(確認②へ)

    表紙のたたき台:
    色は1色、フォントは1種類、レイアウトは1パターン。ここで迷いを断ちます。

    中身2ページの見本:
    見出しサイズ、本文サイズ、図の置き方、余白の広さを決めます。

    判断の目安:

    5秒で「誰向け」「何が分かる本か」伝わるか。

    手に取ったとき自社らしいか。

    文字が詰まりすぎていないか(余白は“呼吸”です)。

    👉 ここで見た目と雰囲気を固定。確認②クリア。

    7〜9週目:仕上げ(確認③へ)

    全体の言い回しをそろえる(同じ言葉を使う)。

    誤字・数字・固有名だけをまとめてチェック(他は触らない)。

    完成PDFを全員に回し、Yes/Noだけで回答。

    👉 確認③クリア。内容の大修正はしません。気づいた改善点は次版メモへ。

    10〜12週目:印刷・納品・当日の運用

    印刷会社にデータを渡すのはイベントの約2週間前が安心。

    配送は会場直送社内受け取りに分ける(紛失や欠品の保険)。

    部数の目安:配布予想×1.2(予備20%)。

    試し印刷を10〜20部だけ1週間前につくると、写真撮影や急な来客対応に便利。

    当日の配布場所担当者を決め、90秒トークを用意。

    3〜5人の小さなチームで十分

    決める人(1名):最終判断を即答。迷いを持ち越さない。

    まとめる人(1名):目次・原稿・デザインの窓口を一本化。

    書く人(1〜2名):章ごとの担当。事例と数字を集める。

    整える人(1名):誤字・表記・名前をチェック。

    会議は週1回30分。「次回までに“これを1つ決める”」だけ宿題にします。

    迷ったらこの章立て(書き方のヒントつき)

    はじめに:この本を読むと何が得か、一言で。

    私たちの考え方:大切にしている価値を3つ。

    よくある課題:読者の“あるある”を短く。

    解決法:3〜5ステップで手順化(図が1枚あると親切)。

    事例:課題→打ち手→結果(数字を1つ)。

    導入の手引き:最初の一歩、連絡先(QRでもOK)。

    各章の最後に**「一言まとめ」**を付けると記憶に残ります。

    見た目の決め方(迷わないコツ)

    表紙:色1、フォント1、配置1。最初に固定して以後触らない。

    中身:見本2ページの時点で文字サイズと余白を決め、以後触らない。

    写真:暗い写真は使わない。明るい背景・笑顔・手元の作業が安心感。

    図:1種類の見た目に統一(線の太さ・矢印の形)。キャプションは「何を示すか」を一言。

    当日つよくする「90秒トーク」例(そのまま使えます)

    「この本は、○○の課題をお持ちの方向けに、私たちの解決方法を3つの手順にまとめました。
    3章にはすぐ使えるチェックリストがあり、最初の一歩が5分で分かります。
    くわしい資料は裏表紙のQRからすぐ請求できます。ぜひお持ちください。」

    置き場所は出口の近く。スタッフが手渡しすると会話が生まれます。
    会場限定で帯の色しおりを変えると、手に取ってもらいやすくなります。

    よくあるつまずきと、すぐ効く対策

    原稿が進まない→章の冒頭に結論ひとことを書く(迷いが減る)。

    修正が終わらない→「今週は内容」「来週は見た目」と分けて直す

    写真の権利が不安→1週目で使う写真をリスト化。迷うものは使わない

    納品が心配試し印刷を少し確保+会場直送と社内受け取りの二本立て

    成果はこの3つだけ見ればOK

    1.配布数:何冊手に渡ったか

    2.配布数:名刺交換/問い合わせ/資料請求

    3.面談数:実際に話す場が何件できたか

    この3つをメモすると、次回の増刷や内容の直しどころが見えてきます。

    最後に:チェックリスト(印刷して使えます)

    目的・読者・使いどころ・目次(役割つき)をA4一枚にまとめて確認①

    表紙たたき台・中身2ページ見本を作り確認②

    完成PDFにYes/Noだけで合意して確認③

    印刷の渡し日・納品先(会場直送+社内予備)を決定

    配布場所と90秒トークの担当を決定

    配布後に「配布数/問い合わせ/面談」を記録する用紙を用意

    まとめ

    90日で間に合わせるコツは、合意の場を3回にしぼることと、早い段階で見本を作って迷いを止めることです。 むずかしい工夫は不要です。
    「A4一枚の設計図」「中身2ページの見本」「Yes/Noで決める最終確認」
    ――この3つを守れば、当日にきちんと“使える一冊”が出来上がります。次回は第4回、「コスト設計とROIの見える化」をやさしく解説します。

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