— 明日香出版社・新人営業マンの“哲学本”売り場づくり —

写真は千葉県の書店さんで展開中の『身近にあふれる「哲学」が3時間でわかる本』コーナーです。
これを見たとき私は思いました。「これは本が売れた、という話だけではなく、“誰がどう動いたか”という物語だ」と。
どのように提案したら、書店さんの売り気に火がついたのだろう?
売り場が動き始める瞬間に、何が起きていたのだろう?
明日香出版社の新人営業担当のCさんに聞いてみました。
■「このお店を日本一にします」——新人の宣言が店長の心を動かした
Cさんが春にこの書店さんを担当として受け継いだとき、最初に店長へ伝えた言葉がありました。
「このお店を日本一にします」
普通なら荒唐無稽な営業トークに聞こえます。
それでも、その言葉には気持ちが入っていたのでしょう。
新人ゆえの真っ直ぐさ、まっさらな情熱、そして店長が「この人のために何かしてあげたい」という気持ちを引き出す説得力があったはずです。
これは営業というより、人と人の関係づくりですね。
“この人は本気だ”
そう受け取れば、人は動いてくれるものです。
■「日本一売りたい本が見つかりました」──きっかけはたった10冊から
『身近にあふれる「哲学」が3時間でわかる本』が発売されたのは、そんな時期でした。
初回に棚前の平積み10冊が、発売から1週間で5冊売れました。
Cさんはすぐに店長へ電話を入れました。
「日本一売りたい本が見つかりました」
提案というより、ほとんど“勢い”に近い。
しかし、営業において勢いは武器です。
その言葉を受けた店長の反応は、即答でした。
「仕掛けるので20冊ください。場所は作ります。では番線を言いますよ…」
ここで売り場は一気に動き出しました。
“売れる本”に“売りたい気持ち”が加わり、
“売り気のある担当者”と“仕掛けたい営業”が重なった瞬間、
本の売れ行きが加速しだしたのです。
『身近にあふれる「哲学」が3時間でわかる本』の当店の売上が全国で3位になったのは、必然だったのでしょう。
■「単品で日本一」はすべての書店に可能性がある
全国1位の書店ではなくとも、売り場の規模が大きくなくても、新人の店員さんでも
総合力では日本一になれなくても、単品なら日本一になれます。
「その1冊だけは全国1位」「ある一定期間なら日本一」
になれることはできます。
1000坪以上の大型書店がその売行き良好書の存在を知ったり、展開方法に気づいたりして、あとから大きな展開して実売実績を抜いていくこともあります。
しかし――
最初に日本一にしたのは「当店」だったという事実だけは、永遠に残る。
これは営業の誇りであり、書店の勲章であり、著者にとっても最大の喜びです。
■「仕掛けたい営業」と「仕掛けてくれる書店」がそろう奇跡
今回の一件は、営業の“教科書のような動き”でした。
★ 営業担当者の店長に対する宣言…「このお店を日本一にします」
★ 早い段階の気づき…早期売れ行き情報のキャッチ
★ 即時の報告…すぐに書店店長へ電話
★ 勢いのある提案…「日本一売りたい本が見つかりました」
★ 店長の即断…「仕掛けるので20冊ください。場所は作ります。」
これらがすべて重なって、売り場が動き、お客さんの目にとまり、本が動きました。
売れる本の裏には、必ず「仕掛けたい人」と「仕掛ける人」がいます。
どちらかが欠けると、売れ行きは伸びません。
営業販促の担当者はCさんですが、書店の店長もまた“売る人”としてフルスイングしてくれました。
■著者のためにも残したい、「売り場が動く瞬間」
著者の多くは、こういう話をとても知りたいのです。
「書店はどう販売しているの?」
「出版社の営業担当は書店のどこを見ているの?」
「売れが伸びてるって、どういう状態?」
「どんな瞬間に売行きが加速するの?」
出版の現場で起きたリアルな物語は、何よりの励ましとなり、著者の次の企画への創作意欲を支える力になります。写真を送ればご自身のSNSで告知されるケースも多々あります。その効果は新聞広告を超えることもあります。
本の売れ行きは、出版社と書店と著者がつくる三位一体チームの成果です。
今回の出来事は、その象徴のようなケースでした。
■出版社営業部の役割
今回は新人営業マンの宣言から始まり、書店店長の売り気が重なり、
『身近にあふれる「哲学」が3時間でわかる本』が大きく動き出しました。
しかし、その書店で売れた話で終わるのではなく、
成功事例を全国の書店に拡げていくことが、出版社営業部の役割です。
今後もこうした成功体験を積み重ねていくことで、書店店頭はますます面白くなっていくでしょう。
そして書店担当者さんとの信頼関係も、より強固になっていくのです。






