今回ご紹介する書籍は『社長の覚悟』。著者はSMCグループを率いておられるグループ代表で公認会計士の曽根康正様です。
曽根様はSMCグループが毎月発行するニュースレターに、15年以上にわたりコラム『無限』を連載されています。
このニュースレターは東海地区を中心に700人以上に配布。顧問先企業、お知り合い、税理士、社労士の方々など多彩な職業の皆様に愛読されています。
そのバックナンバーは連載15年で190回を重ね、愛読者の皆さんから繰り返し読みたい、社員や得意先にも読ませたい、ぜひ書籍化してほしいとの要望が寄せられ、その声に応える形での出版となりました。
本にするためのコンテンツはコラムだけで十分な原稿量でした。そのため誰もがコラムのバックナンバーをそのまま印刷するだけで本になると思っていました。
しかし、曽根様は意外な決断を下されたのです。本の編集と出版を企業出版を手掛けるアスカエフプロダクツに委託されました。
デジタル時代のいま、印刷会社に原稿データを渡すだけで本になるのに、なぜわざわざ出版社を通すひと手間をかけたのか。
そう訝(いぶか)る方もいたでしょう。
ところがこの決断が、思いもかけない大きな成果となって帰ってきたのです。
まず、出版社から本を出したことにより、その販路が大きく広がりました。書籍取次を経由して全国の書店に並ぶことで、読者が全国区に広がりました。
大手のネット書籍サイトでも高い評価(星4つ以上が70%以上)を受け、企業出版の本としては異例の増版を重ねています。
もし、印刷所で印刷するだけの本であれば、書店に並ぶことも書籍サイトで評価を受けることもなかったでしょう。
メリットはもうひとつありました。
実は、曽根様は本を出版するにあたり、出版社からある提案を受けたのでした。コラムをまとめた原稿のタイトル案は、曽根様は『経営者の覚悟』と決めていました。
それでも問題はなかったのですが、アスカエフプロダクツから出された代案は『社長の覚悟』。経営者より「社長」の方がより心に刺さるワードです、との出版のプロの意見を受け入れて、いよいよ発刊となりました。
その結果、書店からの評判もよく、売れ行きは好調。書籍サイトでの高評価につながったのです。
曽根様がある会社でセミナーの依頼を受け、ご担当の執行役員の方に、なぜこの本を買われたのか聞くと「社長とつくタイトルはすべて買います」とのこと。本のタイトルの重要性に、改めて気づかされたエピソードです。
知り合いの方から「得意先に行ったら曽根さんの本があったよ」と聞いたとき、見知らぬ方が自分の本を読んでいることを実感し、曽根様は嬉しさがこみ上げてきたそうです。
本を出す喜びのひとつに、全国の知らない誰かに自分が書いた本を読んでもらえることにあります。その体験をされた曽根様の喜びはかけがえのないものだったようです。
また、社労士法人の記念イベントや大手企業セミナーで講演するなど活躍の場が広がり、SMCグループから営業をしたわけではないのに新たな顧問先の獲得ができています。ニュースレターという限られた配布先から、全国区にファンが増えた効果がじわじわと現れています。グループとしてもしっかりと実(じつ)をつかんでいる様子がうかがえます。
(編集・執筆/水田享介)