「24卒」。なんのことかわかりますか?
2024年(令和6年)3月に大学・院を卒業した人の総称です。
いま、この「24卒」といわれる彼らが、就職して一ヶ月も経たない今月、4月に会社を辞める事例が頻発しているそうです。
「きのう退職届出してきた」入社したばかりの新入社員がなぜ?
「明日から転職先候補、探しに行こ」
入社したばかりの新入社員から早くも退職した、との声が相次いでいます。
多くの業界で人手不足が続く中で迎えた新年度、いったい何が…。
(NHK NEWSWEB 2024年4月17日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240417/k10014422301000.html
ひと昔なら、いえ今でも、「せっかく正社員で入社したのになぜ辞めるのか?」などと言われそうですが、記事の内容を読んだ筆者は、意外に納得してしまいました。
ある人材派遣会社(調べ:パーソルキャリア)が転職する理由を聞き取りしたところ、いくつか気になる回答がありました。昭和のことですが、筆者も新卒で入った企業を似たような理由で退職した経験があったからです。
3位-「社員を育てる環境がない」23.5%
5位-「労働時間に不満」21.7%
7位-「尊敬できる人がいない」20.4%
複数回答ですので、どの理由も割合は高く出ています。
これらの理由をまとめると、次のような本音が見えてきます。
「社員教育もできない会社なのに、やたら拘束時間が長くて、目標にしたい上司はまったくいやしない」
確かにそんな職場だったら、さっさと辞めて次の仕事を探した方がましかもしれません。
筆者の場合、通常の業務はキャンペーン広告の立案と実行でしたが、それ以外に当時まだ普及していなかったコンピュータを業務に取り入れるという業務もありました。ミニコンの操作習得とプログラム習得はかなりの負担でした。しかし、当時の上司は業務のデジタル化にまったく理解がなく、筆者の評価はあまり芳しくはありませんでした。
それに加えて、頼りにしていた本部長は子会社へ異動となり、この組織にいても努力は報われないと判断して、2年間勤めたのち退職しました。
おそらくそのまま在職していれば、数年後に始まるOA化(IT化を指す昭和用語)の波がやってきて、筆者の知見も息を吹き返したかも知れません。
しかし、20代前半の筆者には、いつ来るともわからない流行の波を待つだけの心の余裕はなく、これから伸びるだろうと見込んだコンピュータ広告に将来を掛けたのでした。
「24卒」の皆さんは入社早々、職場環境への失望、目標の喪失と見えない将来設計などに直面しているかもしれません。辞めたくなる気持ちも理解できます。
とはいっても、職場環境はひとりひとり異なりますから、いますぐ辞めましょうと結論づけるのは少し乱暴すぎる気もします。このコラムですべての人が納得できる提案は難しいかもしれません。
上司が部下に目標や将来像を提示できなくとも、会社に売り上げがあり利益を得ているなら、会社は残り続けます。会社とは社員に夢や目標を与えたり、将来像を与えたりしなくとも存続するものです。
会社に期待を持ちすぎた新入社員だからこそ起こる失望と退職願望なのかもしれません。
大事なのは、仕事に対して自分なりに目標設定をしてその達成のために努力を惜しまないことでしょう。
自分の目標と職場の目標が一致していれば、評価はより高まります。WinWinの関係ですね。そうでない場合は、周囲の環境を自分の目標に変えていくか、自分が目標にあった環境に移動するほかありません。社内にそのような環境があれば、会社を辞めずに済みます。
社内を見回して見当たらないなら自分で理想の環境を作るのもいいでしょう。新人が新規部署を立ち上げるのは難しくても、企業内起業、社内子会社などいろいろな動きは必ずあります。自分が社内のそのような波に乗るには、努力、能力、競争力、アピール力が問われますが、何の保証もなくフリーランスで働くよりリスクは少なく安心です。
ただし、自分がたてた目標がコロコロ変わる人には向かない話ではありますね。(水田享介)