みなさんは同人誌という言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか。
シロウトが書いた作文集?プロになれない連中が好き勝手に創作したマンガ、小説を寄せ集めた冊子・・・。
ずいぶんとひどい言いようですが、ひと昔前はそう思われていました。
つまり同人誌とはマスコミ・出版界からは切り離されたものと判断されていました。
ところが最近ではこのイメージを払拭する現象が起きています。同人誌が書店で売られ始めて、一般人から読まれるメディアとなっているそうです。ついには「誰もが作家になれる時代がやって来た」と紹介されています。
「誰でも作家」同人誌脚光 コミケ300万作品、研究の糧に
自主制作本「同人誌」の市場が盛り上がりを見せている。即売会の参加者が増え、消費金額は2020年度比で8割伸びた。大手書店でも扱われるようになり、サブカルチャーの枠を超えて出版の表舞台に・・・。※記事は会員限定記事です。
(日本経済新聞・チャートは語る 2025年5月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC10E1Y0Q5A410C2000000/
新聞メディアが煽っているだけと思われるかもしれませんが、別の記事でも同人誌の活動が全国的に広がっている現象を紹介しています。
リアルな冊子「ZINE」にハマる若者たち、
SNSにない魅力とは…各地でイベント・書店に専用棚
個人や少人数のグループで制作する小冊子「ZINE(ジン)」が人気だ。自由度が高い自己表現のツールとして、制作に取り組む若者が増えている。各地で販売イベントが開かれているほか、大手書店で専門の棚を設ける動きも出てきた。(大郷秀爾)
(読売新聞オンライン・本よみうり堂 2025年5月6日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/20250503-OYT1T50061/
書籍や雑誌、新聞などのオールドメディア(紙媒体)は消えて、すべて電子ブックになるだろう・・・。これが21世紀社会の常識と言われていました。
しかし、現実はそうなってはいないようです。なぜなのか。
筆者の意見ですが、デジタル媒体がすべてスマホの画面に集約されてしまったことが原因だと思います。
デジタル媒体が登場した時、その良さはカラー写真がいくらでも収まり、文章量は無制限。全ページフルカラーが当たり前、でした。
ところがスマホの登場ですべてが変わりました。縦長の手のひらサイズに収まるスマホ画面はただ見るだけのニーズにぴったり。その便利さからデジタル媒体はすべてスマホに収まるようリデザインされました。そして逆にメディアのコンテンツそのものがそのスマホ画面に支配されはじめたのです。

スマホ画面では、延々と続く読み物や大作は喜ばれません。何事も要約された概要だけをサクッと見て、情報を次々とスワイプしていくのが好まれています。
紙面デザインすらもう必要とはしなくなりました。そもそもデザインする余地すらありません。
そのことに気がついた若者世代やオールドメディアを知る人々が、手にとってじっくりと向き合えるリアル媒体の書籍に目を向け始めたと言えるでしょう。
まだ執筆に取りかかっていない方、書きためた原稿を本にしたいと考えている方には、いまが出版のチャンスかもしれませんね。(水田享介)