新刊として書店に平積みされた本でもいつかは返品となってしまいます。
今回は小社の本が書店さんから返品されてから再出荷するまでを解説します。
【出版業界で返品は日常茶飯事】
どんな商品にも売れのピークがあり、徐々に落ち着いてきます。また、毎日新刊が発売になるので、新刊台は他の本と置き換わります。主には売れの落ち着いた既刊本から順に棚前平積みや棚置きとなり、やがては過分な在庫は返品となってしまいます。出版業界では書店さんは本を定められた期間内であれば自由に返品できる制度があります。
【倉庫会社で改装・在庫管理】
書店さんからの返品は取次会社を通じて小社契約の倉庫会社に到着します。
ここでは改装をはじめ在庫管理と発送業務までを行っています。
まずは、書籍からカバーと帯が外されます。そして研磨作業を行い、新しいカバーやオビが巻かれて新品同様に生まれ変わります。その後書籍はいつでも出荷できるようにジャンル、書籍コード順に整列された棚で管理され、出荷を待ちます。棚のある場所は直射日光で本が傷まないように暗所で大切に保管されています。
【書籍の売行き特性を分析】
明日香出版社の営業部では毎日、各書店の書籍の売れ方に注目しています。
そこには様々なヒントが隠されています。
「この本は東京よりも関西でよく売れている」
「この本はビジネス街よりも郊外のほうが売れている」
「女性向きの本だが、男性購入層も多い」など。
データの情報だけではなく、実際にお店に伺い、確認します。来店されるお客さんの様子を見たり、書店員さんにどのようなお客さんが手に取られていたかや購入されたのかを教えていただきます。さらに他にも発見があります。
「他社の『○○○』という本との並列が効果的だった」
「店員さんの手作りPOPで目立って売れていた」
「小社の本が店頭で展開されていた」
売れているお店の成功事例は社内にフィードバックして全員で共有します。
【情報は販促に活かし、受注に繋ぐ】
営業部では毎朝ミーティングを行い、昨日の売行きや書店さんの様子などを情報交換しています。書店さんでの売り方の成功事例は優先的に検討され、必要に応じてプロジェクトを立ち上げたり、おすすめ情報を掲載した注文書を作成したりして、拡販活動が開始となります。
【なぜ売れないのか、どうすれば売れるのかを追求】
一旦返品してしまったお店でも他店の成功事例をご覧になって再発注され、売り場を変えて展開すると見違えるほど売れるようになった例は多くあります。
また、展開する時期を変えてみると売れることもあります。例えば、「敬語」の本は新入社員向けに3月に発行したときは、いまひとつでしたが、5月初旬になって顕著に売れました。連休明けに新入社員が配属後、職場の上司がご自身の敬語が果たして正しいのかを確認するために買われたようです。
このように発売前の想定とは違う読者層が発見される場合があるので、新刊時に売れが伴わなくてもあきらめず、1軒でも売れたお店があれば、その理由を追求し、売れを拡げる行動をしているのです。
【情報は生もの。敏速に広く伝えます】
注目度が高い情報は新刊情報、増刷出来日、広告日程、売行き情報です。
しかしそれだけでなく、昨年の同じシーズンに売れた本や地道だが長期間売れ続けている本の平積みおススメ案内などの情報も注文書に盛り込みます。新刊よりも既刊本のほうが売れているものもあります。
注文書は営業マンが書店訪問で持ち回る以外に、FAX便、DM発送、メルマガなどを使って全国の書店さんへも送っています。
【営業部内勤メンバーの活躍で】
受注しても書店さんに届くのが遅くなると売れないことも多いです。
営業部には内勤部隊があり、主に受注から出荷の手配までを行っています。在庫情報を常に把握し、倉庫会社との緊密な連携で、ミスなく出荷するのは当然のこと、さらにタイムロスをできるだけなくすよう動いています。POPなど販促品は本とは別に郵送などでお届けします。
【倉庫会社、取次会社を通じ書店へ搬入】
営業部からの発注依頼を受けて倉庫会社では出荷に取り掛かります。改装された本が積まれた棚から敏速に正確にピッキングされ梱包されて、パレットに積まれていきます。そして翌日には取次会社に搬入され、仕分けされて書店へ届きます。
以上、書籍が返品になってから書店さんへ再出動するまでの工程です。
小社は書籍を作るだけでなく、売れた情報をもとにどうやれば売り伸ばせるのか、改めて書店さんに並べてもらえるきっかけはないのかを日夜考えており、それを支える倉庫会社のご協力があって実現できています。