オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第68回]-書店減少対策に国がデジタル化推進を提言

2025.03.12

 先日、自由が丘駅前にある百年を超す老舗の書店が閉店しました。駅前と言うこともあり筆者もたびたび訪れていた書店でした。

東京 自由が丘 創業102年の老舗書店閉店
“ここらが潮時”決断

東京 目黒区にある創業102年の老舗書店が閉店することになり、最後の営業日となった20日、なじみの客などが訪れ、別れを惜しみました。
(NHK NEWSWEB 2025年2月20日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250220/k10014728111000.html

 ここ10年で我が国の書店数は4200以上も減少しているそうです。昨年12月時点の書店数は1万430店舗。
 関東圏だけを見ても、10年前から1330店舗が店じまいしています。(NHKニュースより)

 書店は文化の担い手であり、国民が高い知識や知見を持つことは継続した地域社会の維持につながります。人が行き交う交通や生活の拠点に書店があることはとても大切です。

 今の日本は自由競争が当たり前の社会だから、会社や商店の入れ替えは当然の意見もありますが、こと書店に限ってはそうとばかりはいかないものです。

 国として書店の重要性にようやく気がついたのか、書店減少を食い止める対策に乗り出しました。

減少が深刻な街の書店、国がデジタル化推進で経営支援…
「地域の書店振興は地方創生の観点でも重要」

街の書店減少が深刻化している問題を巡り、書店経営でのデジタル化の推進に取り組むなど、政府として経営支援などを通じた書店振興に注力していく…。
(読売新聞オンライン 2025年2月20日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20250220-OYT1T50142/

 「書店経営のデジタル化」は何を意味するのか。記事からはよく見えては来ませんが、
 ・「県立図書館が地元書店から本を購入」
 ・「図書館と書店が共存を図る」
 ・「地方創世推進交付金を活用した書店支援」

などの事例が国会で紹介されたようです。

 昨年11月に経済産業省から以下の特集記事が発表されています。

今どきの本屋のはなし
魔法の薬はない書店支援。プロジェクト推進役が描く策は地道、でも抜本的
書店のピンチに国も立ち上がった。経済産業省は2024年、省内に「書店振興プロジェクトチーム」を発足させた。全国の書店の諸課題を洗い出し、対応策を練るためだ。プロジェクトチームの責任者である南亮・商務・サービス審議官に現状の考えを聞いた。
(METI Journal 2024年11月8日)
https://journal.meti.go.jp/p/35976/

 経済産業省では2024年10月に3点の資料を発表しています。
 ・「書店活性化のための課題(案)」
 ・「全国書店ヒアリングでの声」
 ・「書店経営者向け支援施策活用ガイド」

 これらの資料からはまずは「書店自身が創意工夫の経営」を求め、その実施に必要な資金は「支援策」で得られるようになっているとのこと。

 また、海外の書店の試みなども資料では紹介しており、書店経営の参考にしていただきたいとあります。

 ゲームやSNSなどで子ども達から読書の習慣は失われ、タイパ・コスパで余裕のない大人の社会。どうすれば書店に人が戻ってくるのでしょうか。

 すぐには答えの出ない問題ですが、筆者としても出版に携わる立場から今後とも考え続けていきます。(水田享介)

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