企画書とひとくちに言っても、その企画書であなたが成し遂げたい目的、企画書を受け取る相手、競合の有無などで、様々なタイプに分かれます。
以下に筆者がこれまでの仕事で手掛けてきた企画書をタイプ別に分類しました。
・未来像提示型 -こうなったらいいなという夢を提案
・競合プレゼン型-発注に対していくつも競争相手がいて勝ち抜く提案
・事業遂行計画型-実現する内容や効果を提案する
・完成形予測型 -産み出されるコンテンツの完成形をイメージする
・企業の未来像を考察する-未来像提示型
筆者は新入社員で入った企業で本社勤務となりました。全国に展開する営業職をサポートして、本社機能を支えるスタッフ職です。その中の仕事に、本部長や役員クラスから「我が社はどこを目指していくべきか」考えてみよ、との命を受けることがありました。新入社員や入社数年程度の若者には荷の重い課題でした。
一方で、どうせならと思い切ったアイデアを盛り込んだ企画書を自由に書くことができました。
とにかく、未来だけを見つめればいいので、何のしがらみもない企画書を何度か提出したことがあります。内容はきれいに忘れました。
これが、筆者が社会に出てから書いた最初の企画書です。
・競合プレゼンテーションを勝ち抜く企画書-競合プレゼン型
広告業に転職してコピーライターとなった筆者は、競合プレゼンを勝ち抜かないと、仕事にありつけない厳しい現実に直面しました。特に公共広告、官庁広告はプレゼンはつきもの。フリーランス時代は収入は出来高払い。生活費に直結していたので、勝ち抜くために必死に頭を巡らせて、知恵を絞って企画書を書きました。
他社の動きはわかりませんので、過去に採用された広告を見ながら、採用のポイント、好みの傾向などの作戦をたてて、スポンサー受けのよい広告表現に腐心した思い出があります。
・タイムスケジュールを確認する事業計画書-事業遂行計画書
雑誌広告やシリーズものの広告では、年契約や数年間の契約など長期の契約を勝ち取ることができました。年間の広告を通して商品や企業にどのような印象を形作るのか、好感度はどの程度あがるのか、消費者は増やせるのか、などさまざまな方向から、広告表現の可能性を追求します。
また、広告以外の仕事で講師として講義の場を受け持ちました。企業研修や学校教育の場においては、講義の年間計画は受講者の理解力とカリキュラム内容のバランス、達成可能度合いを事前に知るためには、必要不可欠な企画書といえます。
・アイデアを形にするコンテンツ制作-完成形予測型
まだ形にはなっておらず、本人の頭の中にアイデアとしてしか存在しないが、その完成形を仮想的に表現する手法として企画書を作成します。
筆者は二十年近く映像やゲームの企画、コンテンツ制作に従事していました。映像は撮影から編集まで手掛け、ゲームは企画立ち上げ、またはCG映像パートの制作など多岐にわたります。
(「F1レースゲーム」、PS版「沈黙の艦隊」、「METALMAXシリーズ」、「CD版 NHK 生命シリーズ」、「業務用フライトシミュレーター」など)
こうしたコンテンツ制作においては、いきなり作り始めていいわけではありません。映像なりゲームなり、視聴者やゲームプレーヤーはどういうコンテンツを求めているのか、どういう作品なら消費者はお金を払ってくれるのか。版元(出資社)やスタッフと徹底的にアイデアを練り上げます。そのときに必要なのが企画書です。
この企画書作りで大切なのが、企画書を読んだ誰もが同じ完成形をイメージできることです。実制作では数ヶ月から、時には数年もかかる制作物のイメージを短期間で仕上げて伝えるのは至難の業ですが、この企画書という関門を越えなければ、制作はスタートしません。
おそらくこの完成形予測型が本作りの企画書に一番近い形でしょう。本の企画書ではありますが、アイデアを伝えるためには、写真、絵画、動画、音楽など、さまざまなメディアを利用して表現の意図を伝えることも手法のひとつです。
本の企画書にはこう書けばよい、というセオリーはありません。ただ上記のように企画書のタイプ分けは書籍の企画書でもありえます。
ご自身で本を書こうと思い立ったとき、本を書きませんかと誘いを受けたとき、共著で書く話が来たとき・・・。いずれのケースでも、いきなり本を書き始めるのはおすすめできません。執筆の前に企画書を作成しなければ、どう書くのか、誰に向けて書くのかという方向性がないため、舵のない船のごとく早晩、執筆は行き詰まってしまうでしょう。
要点のみを書きつらねただけの企画書では、たとえ的を射た内容でも相手に伝わりません。いまの状況に合致する企画書タイプはどれなのか。強調するべきポイントはどこか。自分が頭の中で思い描くコンテンツや完成形を相手も想像できているのか。企画書とはその内容もさることながら、プレゼンする相手への「伝える技術」がなければ企画書としては成立しません。
せっかく企画書を提出したのになしのつぶて。ちゃんと説明したのに反応が悪かった。提出先の相手を責めるのではなく、自分の企画書が必要条件を満たしていたのか。相手の求めるレベルまで内容を高めていたのか。そういった諸条件を満たしてこそ企画書は生きてくるのです。(水田享介)