筆者のサラリーマン時代を振り返ると(といっても20代前半しかありませんが)、20代で会議の進行を任されることはまったくなく、会議中は先輩方のご意見を拝聴することに費やされていました。
もちろん発言権などありませんから、まさにお客様状態。任務は会議の終わりを静かに待つことだけ。
会議の場では空気のような存在に過ぎないため、司会役といったその場を取り仕切る能力が磨かれることなどありませんでした。
令和時代の今、コロナ禍でリモートワークが一般的になると、俄然こうしたスキルの有無を問われることになってきました。
会議を仕切る能力を、古くは「コーディネート術」、今のはやりの言葉で言うなら、「ファシリテーション能力」、「ファシリテーションスキル」などの用語になるそうです。
二十代のうちにこうした能力を身につけることは、とても難しく、とにかく経験を積むか場数を踏むしか方法はありませんでした。
ひと昔前はセミナーを開こうにもノウハウはなく、とにかく場数(ばかず)がものを言うとか、経験を積まないと話にならないとか言われ、セミナー運営のノウハウを教えてくれる先輩方は皆無だったと記憶します。
『場づくり仕事術』(著者:矢野圭夏)では、経験だけに頼っていたこれらのスキルを、本を読みながら身につけることのできるビジネス書となっています。
「場の空気を自分のものにする!」
「もっとみんなが話したくなる」
キャッチフレーズの通りならすぐにでも悩みは解決しそうです。
では具体的にどうすればそのような「場づくり」ができるのでしょうか。
その第一歩が「創出したい場の言語化」にあると著者は述べています。頭に浮かぶ完成形はそのままでは誰にも伝わらない。まず、言葉で書き表し、次に企画化し、企画書にまで仕上げるよう提案しています。(「第3章 場づくりのはじめ方 ~言語化は実現を加速する~」)
ただし、企画書だけでいきなりイベントを始めるのは、ハードルは高そうです。そういう人のために著者は「誕生日イベントから始めましょう」とアドバイスします。(「セルフ誕生日会」をやってみよう!)
中年過ぎの男性にはなかなかハードルの高い提案ですが、「ダメもと」で始めるにはうってつけかもしれません。失敗しても誰も傷つくことはありませんし・・・。
場づくりに一歩踏み出した後は、何をすればいいのか。この本の次章からは、いかに価値を高め、セミナーであればどう稼げる場にするのか、その方法を説いています。
第4章 場づくりの価値の高め方
第5章 場づくりの稼ぎ方
場づくりのスキルを上げたり、仕切り能力や現場対応力を上げるだけでなく、継続させるためのノウハウも紹介されています。
先日、筆者はとあるゲームオフ会に初めて参加しました。30年以上の昔、筆者が制作に参加したゲームですが、根強いファンに支えられ、今も遊んでいただいています。発売当時は小学生だったプレーヤーたちもいまでは30代から40代の立派な社会人。筆者には接し方に迷いもあったため、彼らとうまく交流できたのか、いまも反省しきりです。
この本のなかでは、参加者も「盛り上がりたい」という気持ちが大切と説いています。まさしくその通りです。
セミナー開催のポイントがぎっしりつまった著書のため、ひとつひとつ実際に体験しながら自分のものに変えていけば、自分が望む場づくりが完成することでしょう。(水田享介)
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『場づくり仕事術』(矢野圭夏)
https://www.asuka-g.co.jp/book/business/011940.html