さて、以前に取材させていただいた目白大学国語学部英米語学科 前田ひとみ准教授の講座2回目です。今回は日米文化の差と、日本人が海外で活躍するために何が必要なのかを解説くださいます。
では先生。よろしくお願いいたします。
*地理的環境が両文化に与えた影響*
日本とアメリカの文化には、それぞれの歴史や地理的な条件に基づく明確な違いがあります。たとえば、アメリカは約250年前に独立戦争を経て国をつくり、その後も広大な土地を開拓してきました。そのため、社会の中で個人が自立し、自分の意見をしっかり主張することが求められる文化が根付いています。つまり強い個を持つことがサバイバル(生存競争)の必須条件であり、「はっきりと意見を言う」、「個人の権利を重視」、「直接的な表現を好む」、「成果主義」が特徴といえ、アメリカは自己主張型の社会と言えます。はっきり「No」ということや自分の意見をきちんと伝えることは「正直さ」と「誠実さ」の証でもあり、大切な価値観です。この点は多くの日本人は誤解しているのかもしれません。

一方、日本の社会では強い個や自己の主張というのはあまり歓迎されず、それよりも他者との協調性が重視されてきました。これは日本は海に囲まれ温暖湿潤気候で稲作を中心とした農耕文化が発展してきたという歴史的背景からも説明でき、稲作は多くの人が協力しないと成り立たないので、昔から「集団の調和」を大切にする文化が育まれてきました。日本は他者尊重型の社会と言え、日本社会は、集団の調和を重視し、相手を尊重することが求められる文化です。「空気を読むこと」や、「自分を抑え和を大切にすること」や、対立を避けるために「間接的な表現」を好み、自己主張を控えめにし「謙虚」で相手を立てる姿勢が美徳とされると思います。この「和」の精神や人の気持ちを慮る考え方は長い歴史の中で脈々と現代の日本人にも強く影響を与えているように思います。

そしてこうした文化の違いは、子育てや学校教育にも表れているように思います。
アメリカの学校では、ディベートやプレゼンテーションを通じて自分の意見を論理的に伝える力を鍛えることが重視され、また子育てにおいて、小さな子供であっても自分で選択し、自分はどうしたいか、と自分の意見を明確に伝えるように家庭では教育されることが一般的です。
一方、日本の学校では、正確な知識を身につけることや、協調性を大事にする指導が中心になります。そのため、育ってきた環境があまりにも違うので日本人は国際的なディスカッションの場では、発言すること自体に戸惑ってしまうことが多いのだと思います。 また自分の意見を最後まで自信を持って主張することもあまり慣れていないのだと思います。
まとめ
日本においては「空気を読む」ことや「文脈を読み取る能力」が重視される傾向にあり、これは、高コンテクスト文化に分類される日本社会の特徴であり、言葉そのものよりも、話し手の表情や態度、状況全体から意図を汲み取ることが求められるためです。一方、アメリカでは「自分の意見を明確に持ち、それを論理的に主張する能力」が強く評価され、これは、低コンテクスト文化の特徴であり、伝達の明確性や直接性が重視されるため、発言の明瞭さや説得力が重要視されます。
このような価値観やコミュニケーションスタイルの違いを理解し、それに応じた適切な対応ができるかどうかは、国際的な場における成功を左右する重要な要因となります。つまり異文化間のコミュニケーションにおいては相手の文化的背景を考慮し、場面に応じた適切な表現や伝え方を選択する知識と柔軟性が求められるのだと思います。
(取材:浜田)
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