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■「らしさ」はどこにある? デジタル時代の発信術

2025.02.06


 発信のハードルが下がり、スマホひとつで世界に届けられる時代です。

 誰もが「発信者」になれる一方で、「何を伝えたいのか」「どうすれば埋もれないのか」と悩む人も。「私が書く意味ってあるのかな」と考えたことがある人もいるかもしれません。
 「自分らしさを大切に」と言われます。でも、それはどうやって見つけるのでしょうか。どうすれば、発信の中に滲み出るのでしょうか。

「らしさ」とは、視点のクセ
 同じ場所にいても、気になるところは人それぞれ違います。
カフェでコーヒーを飲んでいるとします。「このカップ、持ちやすいな」と形に注目する人もいれば、「豆の香ばしさが好き」と感じる人もいる。「窓際の席が落ち着くな」と居心地を大事にする人もいるでしょう。目の前にあるものが同じでも、どこで心が動くかは違う。それこそが「らしさ」です。
発信の中にその視点を込めることで、文章は自然と「あなたのもの」になっていきます。
 たとえば、「おしゃれなカフェだった」と書くよりも、「木のぬくもりを感じるカウンターが心地よくて、長居してしまった!」と書く方がずっと「あなたらしい」表現になります。「コーヒーも最高!豆の香ばしさがたまらない」なんて添えたら、その場の空気まで伝わるかもしれません。自分の視点を大切にすると、発信には自然と温度が生まれます。そうした言葉を重ねていくうちに、自然と「らしさ」が育っていきます。

「好き」を発信すると色が出る
 映画や料理、本、スポーツなど、「好き」を発信しているとき、言葉はスラスラ出てくると思いませんか。 そうした文章には伝えようとする熱量が加わり、読む人にも伝わります。
 もしあなたが映画の感想を書くなら、「面白かった」より、「最後の10分がドキドキした!」と書いたほうが、らしさが出るでしょう。さらに、「エンドロールで余韻に浸っていたら、隣の席の人も同じで嬉しかった」と書き加えれば、ぐっと「自分の視点を通した言葉」になっていきます。
「好きなものを、好きな視点で語る」。これが、自分らしい発信の第一歩です。

「誰のために発信するか」を意識する
 以前のコラムでも触れましたが、「みんなに届けよう」とすると、どうしても言葉がぼやけてしまいます。でも、「この人に読んでほしい」と思い浮かべると、自然と伝え方が変わります。
 たとえば、「忙しくて時間がない人」にこそ読んでほしいなら、「この本、通勤時間にちょうど読み切れるからおすすめ」と伝えるのがいいかもしれません。「3秒で決めた選択が、意外とうまくいくこともある」と書けば、考えすぎて決断できない人に響くでしょう。
 「この人に伝えたい」と意識するだけで、発信はぐっとしやすくなります。

「らしさ」は、続けることで育っていく
 最初から「これが自分らしい発信だ」と思える人はいません。言葉は、試行錯誤しながら、少しずつ磨いていくものです。続けるうちに、「自分が大事にしたい視点」が見えてくることもある。「これでいいのかな?」と迷いながら発信した言葉が、意外と誰かの心に残ることもある。発信しながら、少しずつ形になっていきます。

 デジタル時代もこれまでも、「自分らしさ」を伝えることは変わりません。言葉の選び方ひとつで、印象は変わる。伝え続けることで、「らしさ」は少しずつ育っていきます。
 さて、今日の発信はどんな視点で書いてみますか。 選んだ言葉に、「あなたらしさ」はもう滲み出ているかもしれません。

牧野 妙子

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