~目白大学 外国語学部英米語学科 前田ひとみ准教授にお話を伺いました。~
西武新宿線中井駅を下車。北口から出て歩くこと10分弱。五の坂を昇ったところに目白大学新宿キャンパスがそびえ建っています。
校庭に入って辿り着いた棟にある、研究室の扉をノックすると前田ひとみ准教授が出迎えてくださいました。研究室にはたくさんの写真が飾ってありました。驚いたのは2009年度から毎年学生達が先生を囲んでのお誕生日祝いの写真と寄せ書きでした。先生は特に自身の誕生日を伝えたりはしていなかったのですが、一度知った学生達から次の期の学生達へと、先生の誕生日を口伝えてきたようです。先生の人気の度合いがよくわかります。まずは前田先生のプロフィールです。
なんと、中学1年生のときには黒帯初段だった
☆海外留学に繋がる空手との出会い
海外留学に繋がるスタートポイントは小学2年生の時に近所にあった空手道場に通い始めたことでした。途中、やめたいと思うこともあったものの、黒帯を目標に練習に勤しみ、中1で初段、高校1年生の時には黒帯二段に昇格しました。そして高1の夏には空手の日米トーナメントのために30名程でアメリカに2週間遠征し、その滞在期間の中で初めて目にする異文化に大きく感動し、「アメリカで異文化と英語をもっと学びたい」という思いが高まったそうです。そしてその2週間のアメリカがきっかけで英語を猛勉強することになり、高校卒業後は空手兼語学留学ということで同じ流派の米国本部のあるアラバマ州に行き、アラバマ大学の語学学校に入学しました。これが人生における第一の岐路だったそうです。
日々、語学学校で英語を学び、そして空手を練習し大会に出る日々。このような留学生活を約10か月続け、その間、組手ではライト級でチャンピョンになり、そしてヘビー級との対戦も制し、グランドチャンピョンにもなりました。その後、そのまま空手を続けるか、それとも違う土地に行き、行きたい大学に行くかかなり悩んだそうですが、結果、空手からは一旦離れ、オレゴン州ユージンに引っ越しという選択をされたそう。そしてオレゴン大学で国際学と経営学を専攻し、学士号を取得。オレゴンでは入学から卒業まで同じホームステイ先で子育ての様子、学校や地域とのかかわり方、夫婦のありかた等多くの異文化を肌で感じ、日々の生活の中で学んでいったそうです。本当の家族のように過ごした大学時代、現在もこのアメリカ人のご一家とは大切な繋がりがおありです。
☆3年間の社会人生活で身に付いた人間的な厚みとスキル
オレゴン大学卒業後に帰国。大手企業に就職し、半導体の海外営業として7か国へ出張をされましたが、入社してから半導体には全く興味がなかったことに気づき、興味のないことは頭に全く入らなかったようで、仕事の運び方もうまくいかず失敗も多かったそう。アメリカの大学生活で獲得した変な自信は少しづつ削ぎ落され、自省し、学習し、しかし、それが今の人間的な厚みや他者への理解と寛容さに繋がったそうです。この社会人生活の3年間が人生で最も大変で辛い時期だったそうですが、仕事を通して得た営業力、プレゼン力、文書作成や仕事の進め方、そして国際的な舞台で通用するビジネス英語や振舞いを身につけられました。また、学生から社会人に、そしてアメリカから日本の生活と文化的ギャップも強く感じられ、それがその後の大学院での深い学びに繋がったとのことです。
☆大学院入学のために再渡米。そして博士号を取得し大学教員に
もともと大学で教鞭を執ることという人生設計をたてておられ、会社員生活は計画通り3年間と決めておられました。企業を辞めた後は、米国ミネソタ州ミネアポリスにあるミネソタ大学大学院へ入学。教育を専攻し、異文化理解教育と英語教授法で修士号と博士号を取得しました。大学院時代は、学部の研究助手だけでなく、学内を国際化する企画を4年間続けたり、現地の小中高校に日本の文化を伝える授業のボランティアをしたり、幼児の日本語教室の開校、週1のベビーシッターのバイト、日本語補習校で教えたりと教育を軸とし、様々なことをしてました。
2006年に帰国し、2007年4月に目白大学着任。異文化理解教育、異文化コミュニケーション、ビジネス英語、キャリア教育、英語の講義などを担当し、現在の研究テーマは海外留学の教育的価値で国際学会等で研究成果を発表しているとのことです。また高校生や企業向けに異文化コミュニケーションの模擬授業や研修も行っておられます。
学ぶ方へのアドバイス
❤好きなことをたくさん見つけることが幸せに繋がるというお考えについて詳しくお聞かせください。
まず、「好き」という気持ちが一番大切ですね。
好きという気持ちがあれば誰が何を言わなくても自分で進んでやるので。ゲームも好きだから勝手にやるのと一緒ですね。そして好きなものが多いほど人生が豊かになると思うので、どのようなものでも自分の「好き」という気持ちが一番大切です。そこから学び方やスキルの伸ばし方も派生していくと思います。そして教員としては英語を受講している学生に対してその「英語が好き」という気持ちがもっと好きになるように、面白くて学生が為になったと思う授業を展開するように心がけています。
❤英語の学習において、発音やイントネーションを楽しく学ぶ方法についてアドバイスをお願いします。
英語に限らずなのですが、コミュニケーションは相手に伝えたいという意欲が基本です。日本には恥の文化であり、英文法に沿って正確に話さないといけないとか、きちんと発音しないと恥ずかしいとかの気持ちが先にありがちです。
文法や発音などは後からでもいいので、まずはコミュニケーションを取るということを怖がらない、恥ずかしいと思わないように意識したら良いかと思います。発音やイントネーションは場面を設定し繰り返し身振り手振りを入れて練習することをおすすめします。映画やドラマであれば、一度目は字幕有で、そして字幕を隠し、三度目は一時停止と巻き戻しと再生を繰り返して一場面ごとに完コピしていくと発音やイントネーションのスキルはかなりつくと思います。
それから、日本人は日本語を話すだけでものすごいことだと私は初回の授業で学生に伝えるようにしています。日本人は小学校に入学し、まずひらがなを学び、そしてカタカナを学び、漢字を学び、そして小3ではローマ字を学びます。中1になると本格的に英語文法などを学び、例えば犬という単語だけでも「いぬ、イヌ、犬、inu、dog」と4つのフォームで書けるというのがまずすごいです。それだけでなく、物の数え方、漢字の読み方、敬語、、、などなど日本語は複雑さを極め、日本語が世界でもっとも難しい言語の一つと言われる所以です。ですので英語を学ぶという姿勢だけで、本当にすごいこと思っています。だから英語を学ぼうとしている学生達はそれだけでリスペクトしてますし、そして最高に素敵だと思います。
前田先生、ありがとうございました。大切なお話はもっとお伺いしていますがとても長くなりましたのでここでいったん中締めさせていただきます。実は異文化コミュニケーションについてのお話が鳥肌ものでしたのですが、それはまた後日にアップさせていただきます。お楽しみに!
(浜田)