オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

好きです、ローカル出版物

2024.10.08

地方に行った時、その土地土地の書店さんに入ってローカルな出版物を買うのが好きです。
今回は、自分の書棚から特に好きな一冊をご紹介します。
出版を考えている方におかれましては、こんな本もあるのね、というご参考にもなれば幸いです。

『新版 仙台藩歴史用語辞典』
仙台郷土研究会 編
ISBN 978-4-990613-02-0

「キンコンカンコン」の歌でも知られ、今年の4月で惜しまれながら閉店した仙台市の金港堂本店さんで購入した一冊です。去年の夏に入手しました。

私ごとではあるのですが、小さい頃に仙台界隈で過ごした時期がありまして、仙台141にあった丸善さんと、壱弐参横丁のすぐ近くにあった(今の仙台アエルに移転する前の)これも別の丸善さんが自分の人生で初めて活字に触れた場所でした。金港堂さんでは小学校に上がる頃、魚か貝か、そのあたりの方向性の生物図鑑を購入したことを覚えています。

本をまとめたのは1930年設立、歴史研究を行う仙台郷土研究会という団体の皆さん。その機関誌で断続的に特集されていた用語集を単行本として一冊にまとめられました。
ページを開けば「姉家督」「いぐね」など、歴史の教科書ではまず出てこない言葉が盛りだくさんです。歴史的言語でなく平易な現代語で表現されているので、新鮮な気持ちで楽しく読み進められます。

ちなみに姉家督とは「仙台藩内の農村で見られた、男女関係なくいちばん上の子に家督を継がせる相続形態」、いぐねは「屋敷の周りの樹木(屋敷林)」のことを指します。20年ほど前に放送された仙台が舞台の『天花』という朝ドラで、主人公のおじいさんの家がまさに「いぐね」でした。

最近「ファミリーヒストリー」など、ミクロの歴史を調べるのがささやかなブームになってきていますが、これらに代表されるように歴史は人々の暮らしの間にこそ残るものだと思います。その一端が伝わる、全容でなくても後の人の大きなヒントになる、まさに活字として残されるべきことが収まっている、そんな本です。

最後に小話ですが、金港堂の近くにある文化横丁の「祥発順」、おいしいのでおすすめです。仙台で最古の個人所有のビルなのだとか。ここもまた、町の歴史の生き証人です。

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