これから本を読み始めるとき、あなたはどこから読み始めますか。本のどこから読み始めるか。読む人の個性が出る瞬間ですね。
目に付きやすい帯(いわゆる腰巻)、著名人の推薦文、はたまた著者プロフィールなどは定番。本の概要を先に知りたいという方は目次やあとがきに目を通すでしょう。小説ならあらすじから知っておきたいというかたもいます。逆に何一つ知っておきたくないのは推理小説でしょうか。
読み方は人それぞれ、本は楽しく読みたいですね。
ところが、本の読み方でちょっと困った読み方をする人が目立つようになってきました。
たとえば、株や投資を指南するビジネス書などで、書いてある通りに真似したのに儲からなかったというクレームが増えているというのです。
手っ取り早く利益を得たいからと、結果を得やすいノウハウ本やビジネス書を読んで、書いてある通りに実行して損をするケースが多いそうです。
本に書いてあるようにやったはずなのにうまくいかなかった。これはおかしい。その責任は本の著者にあるはずだ。ブログやSMSでそう訴える人は、自分の正当性を強く主張しています。
そういう人の多くは、本の一部分のみを読んで、自分の都合のよいように解釈したケースが後を絶ちません。
はたして、本の内容をまねしただけでうまく儲かるのでしょうか。著者の多くは過去に儲かった経験を元にその手順を書いていますが、世の中は常に動いています。もし読者が株や投資をするなら、本が書かれた時とは違った条件で戦わなければならないのです。
このことは常識として知っておくのは当たり前のことです。その常識をわからない人が増えています。
わかりやすく説明すると、大学入試の参考書があります。一般的な入試問題から大学別、学部別に過去問(過去に出題された問題)集まで、懇切丁寧によりどりみどりで揃っています。
ではこの問題集を集めてそこに書かれている解答を知ったとして、はたしてその受験生は合格間違いなしでしょうか。
そうではありませんね。ご存じのように、過去問と同じものが試験で出ることは滅多にないからです。しかし、過去問を自分の力で解けた人は合格する確率は確実に上がります。
なぜでしょうか。合格点を取れる受験生は、問題の中にある本質を理解しているからです。ひとつひとつの問題の答えを知っていても、類似の問題が出たときに解を求める手段を知らなければ、歯がたたないことは自明の理です。
ビジネス書にある儲けた手法とは、ある意味で参考書の解でしかありません。読者が読み解くべきは、その事実のウラにある物事の本質ではないでしょうか。
「木を見て森を見ず」といいます。
木が事実とするなら、森は本質といえるでしょう。木の種類を言えても、森がどのような役割をはたすのか、森とは何か。
そういう問いかけが自分の中にない人は、どんな本を読んでも未来への指針を得ることは困難でしょう。
本にある事実は過去です。未来に向けて成功したい、儲けたいという欲を抱く人こそ、過去の事実を分析することで、揺るぐことのない本質を見つけていただきたいですね。(水田享介)