12月になった。12月最大のイベントといえばクリスマス商戦だろう。ちなみに「商戦」という言葉はクリスマス以外には「ボーナス商戦」しか聞かない。それくらい流通業界の意気込みが違うのだろう。
我が家では10数年前からシュトレンのまとめ買いをして身内に贈っている。家族の勤務先にパン製造部門があり、そこがシュトレンの購入を募るためだが、受け取った兄妹宅からは好評のようだ。
シュトレンはレーズン、ピール、ナッツ類を混ぜた小麦粉を焼き固め、周囲にたっぷりと砂糖を塗(まぶ)したドイツの伝統的な焼き菓子。
※家族が勤務する団体のパン部門謹製シュトレン。白いのはたっぷりの砂糖
このシュトレン、ドイツ文化圏ではクリスマス時期に提供される。しかし、クリスマス当日に食べるわけではなく、12月に入った早々から、少しずつすこしずつ切り分けて食べる習慣がある。いわゆる「アドヴェント(Adven)」。日本語では「待降節」、「降臨節」と言い、クリスマスまでワクワクの期待感を持ちこたえるよきツールとなっている。
しかもクリスマスが近づくにつれてシュトレンの味も濃厚になっていく。アドヴェンに合わせて味が熟成するなんて、菓子としてうまくできている。
※シュトレンは真ん中からカットして切り口を合わせておく
絵本作家、ターシャ・テューダーの作品にも「クリスマスアドベントカレンダー」なるものがあり、カレンダーに24枚の扉を仕込んで、クリスマスまで毎日一枚ずつ捲(めく)っていく。大人の私が見ていても楽しい。
いわゆる「もういくつ寝るとお正月~♪」を西洋ではシュトレンやカレンダーでやっているわけで、来たる日の待ちきれない気持ちをどう楽しむか、その方法が習慣として定着している。日本の子どもはただ歌って待つだけなのが少し悲しい。
今朝(2024年12月11日)のラジオ番組で「シュトレンは何本買ってもいいんです。贈り合えばいい。自宅用に買ってもいい。ひとり住まいの方もなんならひとりシュトレンしてもいい」とシュトレンのトップセールス(?)をしていた。
つい数年前まで、スーパー、菓子店、コンビニの店頭でクリスマスケーキを立ち売りしていた。今はもうない(?)のかな。ああいう雑な商戦風景が日本の風物詩として根付かず正直ほっとしている。
シュトレンは一本売りだけではなく、カット売りのカットシュトレンもある。シュトレン未体験の方は、ぜひお試しあれ。
「ひとりシュトレン」。それもいいかも。(水田享介)