まず始めに、どなたでも本は書けます。小学校などの国語の授業で、俳句を書いた経験は誰にでもあるでしょう。
本を書き始めるのに俳句は不要です。最初は単語だけでもいいんです。ふと思いついた単語を書き並べてください。単語の数を増やしていくとそのつながりに自分の感情が表現されていることがあります。
次にてにをはをつければ、少し乱暴ですがそれだけで俳句になります。俳句をもう少し伸ばしていくと短歌らしくなります。短歌をつなげていくと連歌。それをさらにつなげていくと、ひとつの読み物となっているはずです。
その繰り返しを続けることで、いつしか本ができあがるはずです。
万葉集、平家物語・・・。そのようにして成立し、読み継がれてきた文学作品が、日本には数多くあります。
では、あなたが書いたその文章が誰かに読まれることがあるでしょうか。
なかなかそうはなりませんね。まだ本にする決意もなく、読まれることを前提に書いていないからです。
わかりやすくするために類似の話をしましょう。訪ねた先で結婚式の映像を見せられた経験は誰にでもあるでしょう。未編集の映像は短くても一時間、長くなると数時間にわたることもあります。自分や子どもの結婚式なら気にならない時間も、たとえ親族のそれであってもかなりの苦痛に感じるはずです。
その苦痛は思いつきで書いた文章にも当てはまります。
自分の経験や人生を書き残しておきたい。それは貴重で立派な行動です。しかし自分の思いだけを書き連ねただけでは、読んでくれるのは家族だけ、身近な親戚だけとなりがちです。これでは身内でしゃべっていることと同じ結果です。せっかく本にしても広く一般には普及せず、時間をかけて書いたものが書き捨てになってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。
どうすれば赤の他人でも読んでもらえるのか。迷ったときは、以下の3つのことばを思い浮かべてください。
1)この文章は誰のために書いているのか。具体的な人を思い浮かべましょう。
2)この文章・本を読んだ人にどんな気持ちになり、どんな考えを持ち、どんな行動をとってもらいたいのか。書き出してみましょう。
3)読者が知りたいことを読者の目線で書いているのか。読者に伝わることばを選びましょう。
文章を思い巡らせている頭の中で、もう少し他人の視線、自分以外の人がどう読むか気に懸けてみましょう。
たった3つのルールですが、このルールを守って書いた文章とそれ以前の文章を読み比べてみてください。
同じ内容を書いたとしても、伝わり方が大きく違っているはずです。(水田享介)
※このコラムは、アスカ・エフ・プロダクツ 取締役 浜田充弘氏へのインタビューを元に構成しています。