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■「キャッチコピー」を心に届く一言にする

2024.11.25

整理記者として見出しとレイアウトを扱い、約5万件のコピーライティングに関わってきました。見出し一つで印象が大きく変わる……そんな経験を通じて確信したのは、キャッチコピーとは「長い文章から本質を切り取る」技術だということです。たった一言でも、読む人の視線を止め、心に残る言葉になります。けれど、この「視線を止める一言」を作るのは簡単ではありません。シンプルだからこそ、難しいのです。
でも、いくつかのポイントを押さえれば、キャッチコピーに必要な言葉が見つかりやすくなります。


誰に届けたいかを思い描く

キャッチコピーを考えるとき、一番大切なのは「誰に届けたいか」です。「たくさんの人」に伝えようとすると、かえって印象が薄くなることが多いもの。むしろ、たった一人に届けるつもりで考えるのがちょうどいいのです。
たとえば、「仕事に悩んでいるあの人」や、「孤独を感じているけれど、どこかでつながりを求めているあなた」。具体的な一人を思い浮かべるだけで、自然とその人に向けた言葉に意識が働きます。そして、そこから生まれた言葉は、不思議と多くの人の心にも届きやすくなるのです。


削ることで力が生まれる
キャッチコピーの面白さは、「削る」ことにあります。言いたいことが山ほどあっても、それをすべて入れ込むと伝わりにくくなります。思い切って削り、シンプルにすることで、短くても力強い言葉が生まれるのです。
たとえば、「自分の軸を大切に」と言いたいとしましょう。「自分の軸を持つことで、迷わずに生きられる。選択肢が見えてくる」――これを、あえて削って「迷うときこそ、自分を信じる」。短くすると、すっと心に入ります。これが、キャッチコピーの面白さです。


言葉に力を込める
心に残る言葉には、力があります。けれど、力は「強調すること」ではなく、「その人に響くこと」で生まれるものです。どれだけ思いが宿っているかが、キャッチコピーの「力」になります。
たとえば、心が折れそうになっている人には「頑張れ」ではなく、「休もう、それもいいさ」。自分の存在価値に悩んでいる人には「君は大切だ」ではなく、「ここにいるだけでいい」。こうした、言葉の力はターゲットの心に寄り添うことで初めて生まれます。その人にとっての「必要な言葉」を見つけることが、キャッチコピーの大切なポイントです。


日常の中で探してみる

キャッチコピーのヒントは、意外と日常の中にあふれています。通勤途中に見かけた広告や、何気なく耳にした会話、息をのむような夕焼けなど、身近なものの中にヒントがたくさんあります。
ふと気になった一言や風景は、メモに残しておくといいかもしれません。後から振り返ったとき、そこから新しいアイデアが生まれることも。見過ごしがちな日常の中に、キャッチコピーの種があります。 キャッチコピーは、言葉をそぎ落とし、繰り返し磨き、ようやく生まれるものです。その一言には、その人の考えや思いがにじみ出ます。正解はありません。SNS投稿を普段からされているなら、いつもより少しだけキャッチコピーを考える時間をとってみてください。きっと、あなたの言葉が見つかります。
                                   

                                       牧野 妙子

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