オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第23回]-商業出版にこだわる人の落とし穴

2023.05.15

 出版社には、本を出したい方々から様々な出版企画や原稿が寄せられます。いわゆる「持ち込み原稿」です。
 中には、ターゲット読者層を絞り込み、こういう内容の本を出せば売れますと説く企画書もあるそうです。もちろん執筆は企画者自身を自薦しています。

 これらの持ち込み企画や原稿が日の目を見ることはまれです。と言うのも、そのまま本にすれば売れるほど出版業界は甘くはありません。ほとんどの場合は出版社からの返答はないか、アスカ・エフ・プロダクツの場合は、自費出版で出してみてはいかがとアドバイスする流れになります(もちろん本にする価値があればですが)。

 ところが自費出版と聞いただけで、せっかくの提案を拒絶する方が少なからずいらっしゃいます。

 市場ニーズがなくともご自身の労作であるなら、自己資金で本にする価値はありそうなものですが、頑なに出版社からの発刊を望まれます。

 実はそういう人の多くは、「商業出版」という形式にこだわるあまり、なかなか自分の本が出せない隘路、袋小路に陥っていると言えるでしょう

 おそらく、自身の心の内ではこうつぶやいていることでしょう。

 自分の著作は商業出版されて当然だ。全国の書店の棚に並んでこそ価値がわかるというもの。著名人や有名作家のように大々的な宣伝さえあれば売れるはず。それなのになぜ、自分に自費出版などと言ってくるのか。

 他人にはうかがい知ることのできないプライドや自尊心が働くのか、もしくは使い切れないほどの印税収入を夢見ているのでしょうか。楽観的な考えをもつのは悪くはありませんが、そもそも商業出版と自費出版の違いを誤解していることに、
気がついていません。

 このコラムでは、昨年10月に【[第6回]-商業出版と自費出版。どこが違う】の回で解説しています。

【[第6回]-商業出版と自費出版。どこが違う】
(アスカ・エフ・プロダクツ/オリジナルコラム 2022年10月13日)
https://asuka-f.co.jp/column/vol6

 結論から言うと、今では大きな違いはありません。

 しいて違いを挙げるなら、執筆の段階から編集者のチェックが入るのが商業出版、自由に書けるのが自費出版といえるでしょう。
 出版社の編集者は売れる本を作るために、本の内容に積極的に関わってきます。書き直しを繰り返し指示されるため、執筆者にはそれに耐えられる精神力が求められます。それが煩わしいと思う方は、迷いなく自費出版をお勧めします。

 また、商業出版ならば出版社が大々的な宣伝をしてくれると思い込んでいる方がいます。しかし、それは初版から売れることが約束された人気作家などほんの一握りに過ぎません。
 また、マスコミが話題に取り上げる本は、世の中が求めているテーマや知見が伴う場合であり、出版社の力(?)やえこひいきが効力を発揮することはありません。
 書店への配本についても、アスカ・エフ・プロダクツの「マイブック出版」であれば、自費出版であっても全国配本をしているので、商業出版と同じ土俵に立っているといえるでしょう。
 もちろん、印税契約を取り決めて増刷がかかれば、印税収入を得ることができます。

 世の中には出版コンサルティング、出版セミナーといった有料の講習会があるようです。そこに十何年も通い続けて、作家や評論家としての教養と資質を身につけ、いつの日か出版界に颯爽とデビューせんと夢見る人々がいると聞きました。
 その日のための投資と思えば、高額のセミナー料金も苦にならないそうです。

 しかし、筆者に言わせると、さっさと原稿を書いて買い取ってくれるスポンサーを探す方がよっぽど文章修行になります。採用されれば収入にもなります。
 もっと手っ取り早いのが、賞を取ること。数千~数万点の応募作品から選ばれるのは大変ですが、応募して賞さえもらえばいいのです。
 筆者の場合は、コピーライターとして広告賞をいただき、また映像作品では米国で作品賞を頂いたことから、業界で応援してくださる個人の方や企業が現れて、今日までクリエーターを続けることができました。

 いつの日かなどと思わず、一刻も早く作品を完成させて、賞取りレースに参戦しましょう。毎年、数本は応募することを続けていればそのうちに受賞することもあります(しないこともあります)。

 変なプライドや商業出版というこだわりを捨てましょう。それは足がトラップにかかり、自分で身動きを取れなくしている落とし穴です。自分の思いをさっさと作品や本にまとめ上げ、世の中に常に問いかけることから第一歩を踏み出してみませんか。(水田享介)

一覧へ戻る ▶