オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第17回]-AIが執筆代行する時代になりましたが・・・。

2023.02.27

昨年末に登場するや、瞬く間に多くの人々の支持を集めた対話型チャットAI、ChatGPT。今ではGAFAを脅かす存在として、圧倒的な人気を誇っています。

[764]ChatGPT 登場!AIは人間の執筆活動を駆逐するか?
 みなさんは「ChatGPT」というネットサービスをご存じでしょうか。
 昨年の2022年に無料公開(2022年12月1日)が始まると、瞬く間に100万人超のユーザー登録を獲得・・・簡単な挨拶から高難度の専門的な質問まで受け付け、数秒以内になんとなく納得させられる解答を得ることができます。
明日香出版社・公式サイトコラム 2023年01月23日)

 
 ところで日本でも、機能的にChatGPTに近いAIとして、ライティングアシスタントなるものが昨年、デビューしています。
 
 株式会社デジタルレシピが提供するAI ライティングアシスタント「Catchy(キャッチー)」は、ツィッター文章生成から広告コピー、文章作成まで幅広い文章作成を支援します。
 
 
AI ライティングアシスタント「Catchy(キャッチー)」
100種類の生成ツール
用途に応じて、100種類以上の生成ツールが使えます。広告、資料作成、webサイト制作、セールスレターなど様々なシチュエーションに対応しています。
 


 おまかせ文章、新規事業のアイデア、記事作成にはじまり、果ては仕事のお悩み相談まで、100種類ものラインアップが揃っています。
 
 文章には目的に応じて様々な書き方がありますから、作りたい文に特化したプログラムを選択させるのは、賢い方法ですね。
 
 筆者は長年、コピーライターとして、また、書籍著者、コラムニストとして執筆活動してきましたが、この「ライティングアシスタント」をどう評価すれば良いか、少し考え込んでしまいました。一刀両断にいい悪いの評価を下すのは簡単なことではありません。
 
 時と場合によっては「役に立つかもしれない」といったところでしょうか。
 
 なぜなら気の利いたキャッチフレーズを書くだけがコピーライターの仕事ではないからです。
 では、人間のコピーライターが何をしているのかというと、ほとんどの時間は「AIにできないことをやっている」とだけ言っておきましょう。
 
 コラムを書いたり、本を執筆する仕事においても同様です。執筆のために準備する時間の方が原稿を書いている時間よりも、はるかに長いのが一般的です。(周囲から-特に家族からはブラブラと遊んでいるようにしか見えないそうですが・・・。)
 
 AIならば、お金も時間も人手もかけず、広告コピーやツィート文ができる。本だって書ける。それは間違いない事実でしょう。省力、省コストにつながると判断された方や企業は、チャットAIを採用すればいいだけのことです。
 
 忘れてならないのは作出された文章を採用し公開するのは、あくまでも人間ということです。つまり、その人には文章の善し悪しを判断して採択する能力を問われているわけです。時には加筆修正さえ求められます。
 判断が悪ければつまらない文章を選ぶだけ。省力化がいくら進んでも、さえない広告が続けば注目度は落ち、売り上げも下がります。
 姿の見えない著者の文章を読んで、感動してくれる読者は何人いるでしょうか。
 
 また、ChatGPTの運用でわかったことに、文章の中身に誤りがあったとしても、AIはそれを修正する能力はありません。
 
 AIツールの本質は、運用する担当者の能力や資質を露骨にさらけ出してしまうということでしょう。
 
 読める文章はAIが創出します。しかしその正誤チェックやそれを読んだ読者がどんな感想を持つかなど、数字には表れない部分の責任はすべてAI運用者の肩にのしかかってきます。
 
 将棋AIは無数の指し方から最適手を見つける能力に優れています。しかし言葉のAIは言葉の作成過程において、最悪の文章(悪手)を出してしまう可能性は常にあります。
 
 アメリカのSF雑誌「Clarkesworld Magazine」は、AIが執筆した作品の投稿が増えすぎたことを理由に、新作の募集を行わないことを発表しました。2023年2月は2月15日時点のわずか半月でチャットAIを使った盗作が350件近くあったそうです。
 
「AIが書いた盗作」の投稿が爆増しSF雑誌が新作募集を打ち切り
SF小説雑誌「Clarkesworld Magazine」が「AIによる盗作の投稿が増えた」として新作投稿受付を停止しました。盗作の投稿は2022年末から急増しており、盗作のほとんどはChatGPTなどの高性能チャットAIを用いた作品だとされています。
Gigazine 2023年2月22日
 

 目新しいAIに飛びついて、作品発表の機会をみずから閉じてしまうとは、本末転倒もいいところ。
 
 お分かりのように、責任能力を問えないAIは、使えば使うほど運用者に無限の責任を問うてくるのです。
 
 AIが賢くなるのはいいことなのか。その賢さを仕事にどう役立てるのか。その運用はいっそう難しくなってきたようです。(水田享介)

一覧へ戻る ▶