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[第27回]-人に読んでもらえる原稿にする方法-1(タバコ休憩を例にして)

2023.06.30

 本を出版するにはまとまった原稿が必要になります。しかも5分や10分で読み終わる量ではなく、少なくとも数日、できれば一週間程度かけて読むだけのページ数はほしいものです。欲張りな執筆者なら繰り返し読んでもらいと思っているはずです。
 読者としても本を手に取るときは、充実した読書体験を期待しています。

 筆者は先日、一冊の紀行ドキュメンタリー本を6ヶ月程掛けて読了しました。総ページ数は574ページ。(『天路の旅人』 沢木耕太郎)
 毎日読んでいたわけではなく、暇を見つけて少しずつページをめくっては、旅の仮想体験を楽しみつつこの半年を過ごしてきました。

 読む人を惹きつけて、読む楽しみを提供できる本はどうすれば書けるのでしょうか。そもそも一般の人にプロの作家のような魅力的な文章が書けるものでしょうか。

 もちろん、それは可能です。文章の善し悪しにプロもアマチュアも関係ありませんから。

 日本語を日常的に使っている人なら、日本語の文章は書くことができます。ただその文章が本になったときに、多くの人に喜んで読まれるかは別の問題です

 どうすれば沢山の人に読まれるか。その方法は別の項に譲り、まずは読まれやすい文章を書く方法について考えてみましょう。

●専門用語、業界用語、略語、内輪ことばは使い方に注意
 著者にはなじみの用語であっても、読む人がイメージしにくい場合は、別に用語解説を加えたり、カッコ内に説明文を挿入しましょう。
 また、話し言葉はそのまま文章に写すのは避けて、書き言葉に直します。略語、隠語、内輪ことばは著者とその関係者にしか伝わりません。せっかく広く社会に読まれる本を出すのですから、未知の読者でも理解できる平易なことばを心がけましょう。
 それだけでも文章は読みやすくなり受け入れられます。

●「たとえば」をじょうずに使いこなす
 個人出版を考える方にはご自身が培ってきた仕事上の知見を書き残したいという方がいらっしゃいます。記述に間違いがないよう、正確に書くことで頭がいっぱいになり、専門用語だらけでなりがちです。
 こういう事態を回避する方法はもうひとつあります。文の冒頭を「たとえば」で始めてみましょう。新しい表現が生まれることがあります。一般によく知られているスポーツや行事、交通などに置き換えて説明することは報道でもよくあります。

 先日、NHKのニュース解説で、円安に対する日銀の市場介入を野球のあるシーンに例えていました。一塁にいる走者は盗塁をしようとする(円売り)と投手(日銀)は牽制球(介入)を投げるふりをする(介入匂わせ)だけで円高に振れる。日銀と市場の関係をピッチャーとランナーに例えた話ですが、うまく言い表していると思いました。

 教科書や学術書でない限り、おおざっぱであっても全体像や概念が伝わることで、読者にはその先を読み進む手助けとなります。

●著者の主張や思想を押しつけない
 ご自身の考えをまとめて出す本であっても、自己主張するだけの文章では他人から読まれることはありません。読む人が共感する内容の本は、読者の立場から物事をみる構成になっています。

●結論だけを書かない
 同じように、著者の考えはこうだ、と冒頭に結論を出されると、だれもその次を読む気にはなれません。ご自由にどうぞ、と本を閉じてしまうでしょう。

●結論に至る過程をていねいに書く
 本は著者と読者の対話でもあります。難解な内容でも丁寧に諄々と説いていく構成になっていれば、理解してもらえるものです。

 さて、ここで例題です。腕試しのつもりで次の話題について、ご自身の筆でコラムを書いてください。

タバコ休憩は給料ドロボーなのか?
社員のタバコ休憩の回数が多く、1日に何回も行っているのに残業時間はきっちりつけるのは納得がいかないと。「非喫煙者はお昼休憩しかないのにずるい」と他の社員からの不平不満の声も出て困っている・・・。
(Yahoo!ニュース 桐生由紀 社会保険労務士 2023年6月26日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6cd421d535c7a5ec873925d39b8f75e2f8738a1e

シェアーズカフェオンライン
(リンク元)
https://sharescafe.net/60605259-20230626.html

 禁煙、分煙が常識化した現代、仕事中にちょっとタバコを吸ってきますと席を離れる人がいます。案の定、なかなか戻ってきません。
 タバコを吸わない社員には、喫煙者のタバコ休憩はサボりにしかみえません。就業中の全面禁煙を訴えますか。上司も加わっているようです。ならば平社員だけ禁止?差別と言われそうです。

 どこかにうまい解決法はないでしょうか。

 記事にあるように、労働問題に詳しい方の解説を読めば、すべて解決?この問題を多角的に考察したよい記事だと思いますが、全面解決とはならないようです。

 ヤフーコメント欄(いわゆるヤフコメ)にもさまざまな意見が噴出しています。すべてのコメントが本当の体験から書いているとは限りません。煽っているだけの書き込みもあります。

 書いていただくコラムは、タバコ休憩のルール作りは求めません。この問題について複数の視点からの意見を採り上げて、読者に提示するまでをコラムの完成としてください。

 この問題を考えるための材料と考え方の事例を紹介して、読者にはどういうルールなら社内がまとまるのかを考えてもらうのがコラムの役割です。

 この問題を読者自身の問題ととらえて、意見を出しあい、議論のきっかけとなることをコラム執筆の目的としてください。

 実はある目的を持ったコラム(文章)を書くことは、文章上達の近道なのです。

・テーマを与えられて、
・執筆者が自己主張せず、情報をわかりやすく提示して、
・読者に考えさせる文章

を書くこと。

 それは制約が多いようですが、テーマが限られることで、執筆に余計な雑念が入らず、慣れてくると書きやすくなります。

 世の中には身近にあって解決困難なテーマは数限りなくあります。

・スマホのSMS詐欺事件はなぜなくならないのか
・マスク着用生活はいつまで続く?
・若者の迷惑動画の投稿はなぜ止まらない?

 書き上げたコラムは周囲の家族や知人に読んでもらいましょう。返ってくる感想や意見の量が多ければ多いほど、そのコラムの評価は高くなります。情報を並べただけでは、反応は返ってきません。どう書けば他人に考えてもらえるのか。そこがよいコラムを書くポイントになります。

 原稿をどう書けばいいのかわからないと悩んでいる方は、これを機会にすばらしい執筆生活をスタートさせてみませんか。(水田享介)

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