オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第36回]-執筆を先延ばしにする人、原稿書きの極意とは

2024.02.02

仕事がはやい即断即決の人、書類の山をテキパキと片付けていく人・・・。昨今のビジネス書の人気を見ると、そんなデキル人間になりたいと思う方がいかに多いことか。

 かく言う筆者も、何の技能も持たず大企業に勤務していた二十代の頃、毎日自分の無能さに絶望しながら働いていた気がします。

 手持ちの仕事が終わらない人の悩みによくあるのが「先延ばし現象」に陥ること。「to Do List」は毎日見返しているのに、未着手やペンディングの項目がなかなか減らない。明日に先送りするタスクが増えていく・・・。

 ある研究では、人が特定の仕事を先延ばしにする理由のひとつは、仕事に着手するときに発生する「不快感という理由のない感情」に支配されることだとしています。

やるべき物事を先延ばしにしてしまう理由とは?先延ばししないためにできることとは?
「メールの言い回しの仕方」などで強い不快感を感じ、その不快感を避けたいという衝動が、タスクを完了しなかった際に予想される結果よりも優先される可能性がある・・・。
Gigazine 2024年01月13日
https://gigazine.net/news/20240113-why-do-we-procrastinate/

 やるべき仕事に着手せずに、いつでもできる仕事で時間を費やす現象は、かえって自分を精神的に追い詰めてしまうとも言っています。〆切り直前になると部屋の掃除や模様替えを始める現象がこれに該当するでしょうか。

 確かに先延ばしをすることで、手っ取り早く何かに対処することが可能ですが、先延ばしをしている人物はそのタスクによってストレスが積み重なり、その結果精神衛生を損なう・・・。
(同上記事より)

 肝心の解決方法は、この記事の後半を読んでいただくとして、筆者なりの先延ばし対策をご紹介します。

 業務で発生する議事録や報告書、学生であればレポートや研究発表、感想文などの文書作成は大きな負担となり、執筆が先延ばしとなってはいませんか。

 その原因としてよくあるのが、「最初の一行目が書けない」、「出だしの文章が決まらない」という言い分です。

 この言い方そのものが、文書への取り組み方が間違っていることがわかります。

 文書は、文頭から文末に向かって書き進み、起承転結が王道・・・そう信じていませんか。

 実は、文章とはどこから書いてもいいんです。結論をまず書いておき、そこから遡って書いてもいっこうにかまいません。
 中盤におく主文だけを書いておき、あとから前文、結論を付け足すのもいいものです。
 読む人は冒頭からシーケンシャル(頭から順番)に読みますが、矛盾や疑問を持たない限り、どんな書き順であろうと、文書として成立していればいいのです。

 「to Do」や原稿をを先延ばしにして悩む人、それでいいんです。やりたいことから始めれば、いずれはうまくいきます。

 筆者の文章の書き方としては、通常は短期に書く原稿を5本程度、頭の中で書いています。数ヶ月かかる中編は5~8本、年単位の長編も数本程度、頭にキープしています。これらを頭の中で並列で書き進めながら、〆切りにあわせてできあがり次第、パソコンに書き写していきます。

 原稿によっては頭の中に何台かのワープロ画面を並列で置いておき、画面の色を変えておくと、区別がわかりやすくなります。

 脳内の仮想的なワープロですから、書き出しの文章というものはなく、ひとまとまりの原稿として、吐き出すように書き進めば、しだいに書き出し最初の一行目は決まります。

 書き出しの文章に深い意味はなく、さほど重要でもありません。完成した文章は仮想空間にあるため、あとは原稿をひたすら書き写していくだけの作業です。

 脳内ワープロのいいところは、故障がなく持ち運びはゼログラム。どこでも書けて、電源不要、記憶容量に制限なし。勝手に他人に読まれたり、批判されたりしないことですね。
 将棋の世界でも「脳内将棋盤」というジャンルがあり、会話だけで将棋を指す将棋仲間もいるそうです。

どうすれば、この脳内ワープロを持てるのかは、また改めてご紹介します。

 これから執筆しよう、本を書こうとお考えの方の参考になれば幸いです。(水田享介)

一覧へ戻る ▶