オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第12回]-本の企画書を書く-その1

2022.12.19

アスカエフプロダクツでは本の執筆を始める前に、執筆者の皆さんには企画書の提出をお願いしています。

執筆者の方が、これからどんな内容の本を書きたいのか、どういう人に読んでもらいたいのか、本を出版する意味、そのことを事前に知っておく必要があるからです。

ところで大部分の方は、本が書き上がったあとのイベントや交流ばかりを想像していませんか。確かに自分の本が書店に並んだ景色はわくわくするものです。誰に贈呈しようか、どんな感想を聞かせてくれるだろうか、本を読んだ後輩や地域の人は自分をどう思うのかなど、想像は果てしなく広がります。

その想像が執筆の励みになるのであればいいのですが、肝心の原稿はまだなく、その前段階の企画書もこれから。原稿すら書いていないのに、なぜ書いたこともない企画書を求めるのか。書き方も知らない企画書など自分に書けるのか。本文を一行も書いていないのに、難しい関門が立ちふさがっているようです。

では、企画書という第一関門はどうやって切り抜ければいいのでしょう。

企画書といえば便利なツールがあります。

パワーポイント(PowerPoint)ですね。略してパワポ。会社の研修、プレゼンテーションなどでしばしば目にする、文字が次々にスライド表示されて、プレゼンをかっこよく演出する。

これさえあれば、企画書はすぐにできあがる。そう思っていませんか。
そして、パソコンの電源を入れると、すぐにパワーポイントを立ち上げていませんか。

パワポを立ち上げ、待つことしばし。

5分経過、10分経過・・・1時間経過・・・・。真っ白な画面を見続けていても何も浮かんでこない。
それはそうでしょう。

立ち上げたパワポの真っ白な画面の前で腕組みしてませんか。

そんな時は、とりあえず簡単な質問を自分に問いかけてみてください。そして、その回答を書き出してください。

1)自分がこれから書く本は誰に読んでもらいたいか。

2)自分を知らない読者が読んだら、どんなメリットがあるか。

書けましたか。よどみなく書けた方は著者への第一歩をクリアしています。

1)の回答が、「家族、親類、友人」だけの人。

読者が身内だけになっていませんか。それでは未知の読者を増やすことはできません。読者がいなければ、書店は本を並べてまで売ってはくれません。身内に配って終わりの本なら、わざわざ何百、何千冊と印刷する必要はないでしょう。

2)の回答が、「メリットはない、もしくは少ない」という人。

得るもののない本を読むことほど、つらいものはありません。だいいち時間の無駄です。著者がメリットを感じないまま書いた本は、その残念な気持ちが読者にも伝わります。

見ず知らずの誰かが、あなたが書いた著書を本屋で手に取り、興味を持ちお金を払って購入して、読んだあとになんらかの成果を得る。

そのことにこそ書店で本を並べる意味があるのです。

企画書を書く前に、このふたつの課題をクリアする必要があります。

1)誰に読んでもらいたいか を考えるなら、読者のリサーチは欠かせません。
企画書作成の期間の7~8割の日数と労力を、出版予定の分野について調べ尽くしてください。10日間の準備期間があれば、8日間はリサーチや資料探しになります。
その分野ではどのような情報や知見を求められているのか、また知られていないのか。ターゲットとなる読者層の人数、年代、職業なども知っておく必要があります。

2)自分の本にどんなメリットがあるか
一概にこうと言えませんが、「自分自身をどこまで客観視して書けるか」ということです。
自分の体験を書くことはこれ以上ない強みですが、「オレがオレが」、「オレはこう考える」ばかりでは、読者の共感は得られません。
また、体験した内容が古すぎたり事実を伝えていなければ、今の若者にとって何の参考にもなりません。
成功体験のすべてが自分の手柄という書き方では、よほどのスーパーマンかうぬぼれか。どちらからもアドバイスはもらいたくないですね。

前回のコラムでも書いた通り、成功よりも失敗体験やそこから挽回した体験のほうが、読者の共感は得やすくなります。

・[第11回]-著者になる人、なれる人、なってほしい人
 著者の方が体験した失敗は実例であるため状況がわかりやすく、なおかつリアルな体験なので価値があります。
 もちろんただの失敗話で終わらず、なぜ失敗したのか、どうすれば失敗を回避できたのか。また、被害を減らすリカバリーはどうしたのか。
 こうしたリアルな実体験こそが、本の価値を高めます。

仕事で培った高度な技術や貴重な経験は、本にすることで後生の後輩たちはもとより、多くの人が末永く受け継ぐことができます。

率直な語り口、熱意の伝わる筆致があれば、直接会わずとも著者の人柄が感じられるよい本になります。

いきなり企画書を書くのが難しいと思われる方は、まずは、読んでもらいたい人を思い浮かべ、その人にどんなメリットを渡せるのか。そのことを真剣に考えてください。

おのずと書きたい本の内容が見えてくるかもしれません。(水田享介)

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