このコラムはご自身の本の出版をお考えの方で、まだ読み物としてまとまっていない方、これから執筆しようかという方、いずれ本にまとめたいという方に向けて書いています。
前回は、本を書くにあたり、その設計図である企画書について説明しました。
今回は本を構成する中身、コンテンツについて説明します。実は本は本文だけで成り立っているわけではありません。
本屋さんに行って本を手に取ってみてください。
何千冊、何万冊と並ぶ本の中から手に取った一冊の本--。あなたはなぜ、その本を選んだのでしょうか。
タイトルを見ておもしろそうだったから。表紙のデザインに惹かれた。自分の好きな著者の新刊だから。前書きが良かった。有名人の推薦文が帯にあったから。目次を見たら自分の知りたいことが書いてあったから。
本を手に取る理由はさまざまです。しかし、本文を全部読んで気に入ったから買うという方はいませんね。もちろん本屋さんで全部読んでしまうのは困りものですが、現実にはそういう人はいません。中身の本文は買ってからの楽しみと考えている人が大半なのです。
本屋さんに自分の本を並べたい。多くの人に自分の本を読んでほしい。自分の本を売ってみたい。そうお考えの方に、今回は本屋さんで売る本の書き方をご紹介します。
本を探すことと、本を読むことはまったく違った行動
読み応えのある文章、ためになる知識がつまった論文など、本文は本を構成する中心であり、本文の善し悪しが本の価値を決定することに異論はありません。
ただ、それは本を購入した後の話。先に書いた通り、本を買うきっかけは本文だけではありません。多くの人の購買動機をみればわかるように、本文以外のさまざまな要素が購入を決定づけているのです。
本の構成要素ごとにその役割とアプローチを見ていきましょう。
1)タイトル
本にタイトルをつけることは意外に難しいものです。本文を凝縮したタイトルはおすすめしません。本の結論をタイトルで言ってしまうと、もう読む必要がありませんね。本屋さんで手にとってもらえるタイトルとはどんなものでしょうか。疑問、期待、混迷、さまざまな?を抱かせて、読みたい気持ちを高めるタイトルはどうやってできるのでしょうか。
タイトルに悩んで行き詰まるより、プロの編集者の力を借りるのもいいかもしれません。
2)前書き
味のあるいい前書きは、本文よりも難しいもの。たとえて言えば、フルコースの料理を頼んだあとに出てくるオードブルのようなもの。メイン料理への期待を高める前菜です。たどたどしい前書きでは本文を読む気持ちが萎えてきます。当たり前ですが、前書きで結論を書く行為は論外です。タイトルに続く導入部分が前書きですから、その連続性も求められ、とても難易度の高い執筆になります。
3)章立て(目次)
目次とも言う章立ては、いわばコース料理の献立表。前書きを読んだら、次に目を通すのは章立て。ここで本文の大まかな構成を理解した見込み客は、あなたの読者になるかどうかを決定します。
4)著者プロフィール
著者プロフィールは読者への挨拶状、もしくは名刺といえるでしょう。目の肥えた読者なら、著者経歴で執筆力や本の価値をすばやくリサーチしています。また読者は著者との共通点や接点を探しながら吟味しています。著書を売るからには著者が謎の人物というわけにはいきません。ある程度の個人情報の開示は必要です。
5)本文(原稿見本)
アスカ・エフ・プロダクツでは、執筆をスタートする前に原稿見本の提供をお願いしています。執筆能力だけではなく、読みやすさや文体、表現などを総合的に拝見しています。
出せばすぐ売れる本。書店に並ぶと飛ぶように売れる本。最初からそんな本はありません。
著者の皆さんと一緒に、「書店に並ぶ本」、「書店で売れる本」を作りましょう。
※このコラムは、アスカ・エフ・プロダクツ 取締役 浜田充弘氏へのインタビューを元に構成しています。