オリジナルコラム

出版がわかる!企画から書店販促のすべて

[第7回]-配本のしくみ

2022.10.25

みなさんはどのようにして本を手に入れているでしょうか。日本の出版界には、効率的に本を流通させるために日本独自の「配本」制度があります。そしてこの配本制度は今も続いています。
書籍のデジタル化、インターネットの普及に伴い、書籍の購入方法も多様化しました。変わりゆく書籍流通の中で、今なお続く配本の仕組みを見てみましょう。

 1)ネット経由で電子書籍を購入

書籍の電子化が進んでいる現在、紙の本ではなく電子書籍での購入も一般的になりました。ネット社会では当たり前になった、データの形で本を手にするダウンロード購入は、自宅に本棚を置く必要がなく、どこにいても本を読むことができるため、一気に普及しました。
全巻揃えると数十巻にもなることの多いマンガは、デジタル化によって市場が拡大しています。各出版社ともマンガ本に特化したサイトを用意しており、特にタブレットやスマホでの購入サイトの運営に力を入れています。

2021年コミック市場は紙+電子で6759億円
前年比10.3%増で過去最大を更新しシェア4割超に
~ 出版科学研究所調べ
紙+電子市場(推定販売金額)は前年比10.3%増の6759億円と、3年連続で急成長し過去最大を更新した。紙+電子の出版市場全体におけるコミックのシェアは4割を超えた。
HON.jp News Blog 2022年2月25日)

 2)ネット通販サイトで購入

アマゾンや楽天などのネット通販サイトでも本の購入が増えてきました。対面販売がメインの大手書店でも通販サイトを運営しており、さまざまなポイントサービスや特典でしのぎを削っています。

 3)書店を訪れて購入

本好きの方、書店によく足を運ぶ方ならご存じのように、書店には毎日のように沢山の書籍、雑誌が届けられます。

雑誌であれば、毎週・毎月の決まった日に並びます。また、新刊書籍は発行日ほどなく並びますし、話題の書籍であれば目立つ場所に平積み(棚ではなく表紙がみえる形でテーブルに並べること)になり、ポスターや販売促進のツールが所狭しと店内を埋め尽くし、購入をさかんにアピールしています。

書店の中はめまぐるしく本や雑誌が入れ替わることで、いつでも最新号の雑誌、話題の新刊書籍を提供しています。
本は手にとって見ないと買うか買わないかの決断はできない。そういう方にとって、現物の書籍が並ぶ書店は唯一無二の存在と言えるでしょう。ネット社会になった今でも、自由に中身を閲覧できる書店の良さ、現物の直接購入の安心感はなくなることはありません。

なぜこのように大量の本を迅速に並べることが可能なのでしょうか。それは出版社が全国の書店に本を配達しているわけではないからです。

日本独自の「配本制度」で発展してきた出版業界

出版社が全国の書店に本を届けているわけではありません。日本には本や雑誌を書店に届けることを専門にする卸の会社、「取次」会社があります。刷り上がった本は、出版社から本の卸を専門とする「取次」にいったん納品されます。取次は全国規模の配送ネットワークを使って、全国の書店に適切に「配本」します。

各出版社が書店から直接、注文を聞き取って本を届けるとすると、その手間と送料は莫大なものになり、出版社も書店も対応しきれません。

ひとつの便に各出版社の本を混載させて、書店にまとめて届けるのが取次の配本システムです。この方式であれば、出版社にも書店にも配送の手間を最小限にできるメリットがあり、効率の良いシステムとして定着した経緯があります。
また、書店が発注数を決定しなくても、過去の売れ行きから最適の納品数を取次が割り出して配本するため、書店側は受け取るだけで済みます。

さらに、取次の仕事は配本だけにとどまりません。出版社の売上金の回収代行、返品対応も引き受けています。売れ残った本は取次が回収します。書店の在庫にはならないため書店は本の在庫管理も不要となり、販売に専念できます。
一方で出版社側も本の流通や売上金の回収に手間がいらず、書籍作りに専念できます。このように一挙両得の配本制度により、出版界独特のの流通ができあがりました。(水田享介)

※このコラムは、アスカ・エフ・プロダクツ 取締役 浜田充弘氏へのインタビューを元に構成しています。

一覧へ戻る ▶