この連載ブログは、「あなたの人生、そしてあなたの会社の『ブランド』を、本にしませんか?」という提案のもと、あなたの中にある「遺産」(経験、知見、価値観、想い)を、あなただけの「一冊の本」として、未来へ遺すためのお手伝いをする全30回のシリーズです。「本」という形を通して、あなたの人生、そしてあなたの会社の「ブランド」を、より豊かに、そして後世に伝えていきましょう。今回は第2部、第6回目です。(過去記事:第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回)
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『あなたの人生を、最高傑作に。~人生を編集し、未来へ遺す30のヒント~』
第1部:あなたの中に眠る「遺産」を発見する(1〜5回)
第2部:自分史を編み、未来へ遺す(6〜15回)
第3部:ブランドストーリーを紡ぎ、未来へ繋ぐ(16〜25回)
第4部:「本」が繋ぐ、過去・現在・未来(26〜30回)
【 今回は第2部の7回目です 】
時系列で人生を振り返る!「自分史年表」で、あなただけの物語の「背骨」を作る
前回は、自分史の「設計図」となるプロット作成の重要性とその手順について解説しました。今回から数回に分けて、具体的なプロットの作り方として「時系列」と「テーマ別」の2つの方法を掘り下げていきます。まずは、「時系列プロット」の作成から始めましょう。
時系列プロットとは、あなたの人生を年代順に追いながら、出来事やエピソードを配置していく方法です。この方法は、自分史の最も基本的な構成であり、初めて自分史を書く方にも取り組みやすい方法と言えるでしょう。
そして、時系列プロットの作成に役立つ強力なツールが「自分史年表」です。年表と聞くと、学生時代の歴史の教科書を思い出すかもしれません。しかし、これから作る年表は、歴史上の出来事ではなく、あなた自身の人生の出来事を記した、あなただけの年表なのです。
なぜ「自分史年表」が重要なのか?
自分史年表を作るメリットは、以下の通りです。
・人生の全体像を把握できる:あなたの人生を俯瞰的に捉えることで、重要な出来事や転機が明確になります。
・記憶を掘り起こす:年表を作る過程で、忘れていた記憶が蘇ってくることがあります。
・エピソードを整理できる:出来事やエピソードを時系列で整理することで、自分史のストーリー展開がスムーズになります。
・執筆のペースメーカーになる:年表は、執筆の進捗状況を確認するための指標となります。
「自分史年表」の具体的な作成ステップ
それでは、具体的にどのように「自分史年表」を作成していけば良いのでしょうか? ここでは、7つのステップで解説します。
ステップ1 年代を区切る
まずは、あなたの人生を大まかに年代で区切りましょう。例えば、「幼少期」「小学生」「中学生」「高校生」「大学生」「20代」「30代」「40代」などです。年代の区切り方は、あなたの人生の節目に合わせて、自由に設定して構いません。
ステップ2 重要な出来事を書き出す
各年代に、その時期の重要な出来事を書き出していきましょう。「遺産」の経験、知見、価値観の棚卸しで見つけた「遺産」をここで活用します。例えば、「小学校入学」「〇〇大会で優勝」「大学合格」「就職」「結婚」「出産」「転職」などです。この段階では、思いつくままに、できるだけ多くの出来事を書き出すことが重要です。書き出した項目は、時系列に並べてみましょう。すると、あなたの人生の流れ、つまり「ストーリー」が見えてきます。
ステップ3 エピソードを肉付けする
書き出した出来事について、当時の状況や感情、周囲の反応などを、できるだけ詳しく思い出してみましょう。5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識すると、エピソードを具体的に思い出しやすくなります。当時の写真や日記などがあれば、それらを見返すのも効果的です。
ステップ4 詳細な年表を作成する
ステップ1~3で作成した年表を、さらに詳細な年表に仕上げていきましょう。ここでは、1年ごとに区切り、その年に起こった出来事やエピソードを書き込んでいきます。例えば、「〇年〇月:〇〇会社入社」「〇年〇月:長男誕生」などです。この作業を通じて、あなたの人生のストーリーが、より鮮明に浮かび上がってきます。
ステップ5 年表を「本」の長さに合わせる
詳細年表を「本」にするためには、分量を検討し、調整する必要があります。出来事やエピソードを過不足なく、かつ「本」としての長さに収まるように項目を調整しましょう。このステップでは、項目を取捨選択したり、複数の項目をまとめたり、より詳細に描写したりすることになります。しかし、最も重要なポイントは、この作業を通じて「本」の全体像が明確になることです。
ステップ6 年表を分割する
「本」としての長さに調整した年表を、章ごとに分割します。それぞれの章が「本」の各章のタイトルとなります。章タイトルは、その章の内容を端的に表すものにしましょう。この作業により、あなたの「自分史」の「背骨」ができあがります。
ステップ7 年表を清書する
最後に、年表を清書します。手書きで作成しても良いですし、パソコンやスマートフォンの表計算ソフトなどを活用するのも良いでしょう。年表を清書することで、あなたの「自分史」の全体像が、より明確になります。
「自分史年表」は、あなただけの物語の「背骨」
完成した「自分史年表」は、あなただけの物語の「背骨」です。そして、その「背骨」に、具体的なエピソードや、当時の想いなどを肉付けしていくことで、あなただけの「自分史」が完成します。また、その肉付けを行うことで、自分史はあなた自身の「ブランド」を体現したものへとなっていくのです。
「自分史年表」は、あくまでも「設計図」です。執筆を進める中で、新たな出来事を思い出したり、構成を変更したりすることもあるでしょう。その際は、必要に応じて年表を修正・加筆してください。
次回は、「テーマ別プロット」の作成について解説します。
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▶︎ 次回の記事:【新連載/第8回】 人生の「テーマ」で自分史を深掘り!テーマ別プロットで、あなたの価値観を未来へ刻む
▶︎ 前回の記事:【新連載/第6回】 自分史の「設計図」を作ろう! プロット作成で、あなただけの物語を紡ぎ出す
▶︎ 前々回の記事:【新連載/第5回】 あなたの「遺産」を未来へつなぐ準備はOK? 自分史作成への「ロードマップ」を描こう!
【編集余話】
先日、上野の国立西洋美術館で開催中の『モネ 睡蓮のとき』展を訪れました。
モネは「自分にしか見えない世界」を生涯追い求め、目に映るものをそのままキャンバスに移すのではなく、自らの “印象” と重ね合わせて描いた画家でした。
「私はただ、目の前にあるものを見たままに描いているだけです。」
これはモネの有名な言葉ですが、私が気になっていたのは、「目の前にあるものを見たままに描」こうとする、そのモネの心でした。モネの人柄や「心象風景」のほうがとても気になっていました。私は絵を鑑賞しながら、この絵を描いているときのモネの心に思いを馳せていました。
晩年の彼は白内障に悩まされながらも、睡蓮を育てた「水の庭」に日々足を運び、刻々と変わる光の具合を必死に追い続けたと言われています。実際、同じ構図の絵がたくさん並んでいるなかで、説明されないとわからないほど構図が崩れ、色味もぐちゃぐちゃ(と言っていいんでしょうか)になったものがありました。なんだかとても人間くささが現れており、美しい睡蓮の絵とは違った感動をおぼえました。のちに白内障を治療した後もその絵を捨てずに残していたことから、モネ自身も何か思い入れがあったのかな、と想像しました。
どんなに身体が変化しても、モネは自身が追い求める光と影に対する探求をやめませんでした。
同じように 私たちもまた、歳を重ねるにつれ、若いころには気づかなかった “色” や “陰影” を、自分の人生のなかに見出すようになります。振り返れば、過ぎ去った日々に “崩れた構図” や “ぐちゃぐちゃの色味” もあったかもしれません。それらも含めてこそ私たちの物語ですし、そこにこそ新たな気づきが宿っていることも多いでしょう。自分史年表を作る作業は、そんな「人生の色合い」を形にしていく過程とも言えそうです。
モネが水面に映る光と影に真実を見ようとしたように、私たちも「自分とは何者なのか」という問いに対して、年表の上に自分の心を写し取っていく――それが自分史づくりなのではないでしょうか。
『モネ 睡蓮のとき』展は、2025年2月11日まで、国立西洋美術館で開催中です。
(田中)